羽生 川上さんご自身の教育方針や子育て手法をお聞きしたいと思います。

川上会長 子どもが生まれてすぐ、Kindleで育児本をたくさん買いましたよ。なんで泣くのか? どういうタイミングでひっくり返るのか? 子どもが何を考えているのかをすごく知りたかったからです。

羽生 またずいぶんと科学的な(笑)。

川上会長 よく「親は子に学ぶ」って言いますが、その通りだなと思いました。僕は最近、人工知能にすごく興味があるんですけど、人工知能がどのように学習していくのかというテーマについて、赤ちゃんを見ていると考察が深まります。知性の本質や、倫理観はどこから生まれるのかということを、娘に教わってるんです。

羽生 お世話が大変な新生児ですのに、そんなに冷静に子育てができている?

川上会長 もちろんそんなことはなくて、理由なく泣かれると、やっぱりつらいです。何をしても泣き止まないですから。そこでイラッとしてしまい、自分の器の限界を思い知ります(笑)。

自然に「子どもと一緒にどこに行こう」と考えるようになった

羽生 自分が親になったなあ、と実感することはありますか?

川上会長 妻が妊娠しているときに、「2人で旅行するのは、しばらくおあずけだろうね」なんて残念がっていたんです。でも子どもが生まれたら意識が変わって、夫婦だけで旅行に行きたいなんて思わなくなりました。小さい子どもがいるとレストランとか、行けない店も増えますよね。それも、全然残念じゃありません。その代わり、自然に「子どもを連れてどこに行こうかな」と考えてるんです。

羽生 川上さんは、子どもとネットの関係についてどのような方針で育てられますか?

川上会長 スマホやタブレットなどには触わらせたくないです。ゲーム機も与えたくない。そしてコミュ障(※)に育ってほしいと思っています。
※ ネットスラングで「コミュニケーション障害」の略。人とまともに話すことができない、極度の人見知り、などの状態を指す

羽生 コミュ障に…。コミュニケーション能力が高い子ではなく?

川上会長 はい。僕自身は、コミュニケーションが下手な人生を送ってきました。でも、最終的にはそれで得をしたなって思ってるんです。いまの時代、コミュニケーション能力は大事だと言われてるから、それを高めようとがんばっている人はたくさんいますよね。だからこそ、わざわざ自分の子はそこで戦わなくてもいいんじゃないかと。何でもそうですが、苦手なところはバッサリ捨てた方がいいと思いますよ(笑)。

羽生 あえて逆で勝負する、と。でも、インターネットに触れるとコミュニケーション能力が上がるんですか?

川上会長 確実に上がると思いますね。スタジオジブリの鈴木敏夫さんから聞いたんですが、インターネットがなかった戦後すぐの時代のコミュ障って、本当に人としゃべれなかったらしいんですよ。家を出なかったし、人と目を合わすことも怖がってできなかった。そういう人達でも、いまはネットに書き込むことはできる。そういうリアルの代替となるコミュニケーションを通じて、人ともちょっとくらいはしゃべれるようになってるんだと思います。

羽生 だからこそ、自分の子にはインターネットに触れさせないで、“真のコミュ障”に育てたいと!

川上会長 できれば無人島とかで育てて、オリジナル路線を進んでもらいたいですね。…って、こんな教育方針についての僕の意見は、妻にぜんぜん相手にもされていませんが(笑)。

羽生 ユニークでオンリー1の子育て、期待しています! 

<インタビューの後編は、自身がプロデューサーとして関わった『山賊の娘ローニャ』、ジブリ作品について語ってもらいました。「ドワンゴ川上会長 ジブリは説教くさいから好き」はこちらです>

(ライター/崎谷実穂、撮影/日経DUAL編集部)

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