子どもが悪さをする → 子どものそばまで行く
 → しゃがむ → 目線を合わせる → 話スタート

 注意事項としては、子どもによって、ほどよい距離や位置関係は違い、同じ子どもでも成長に応じて変わってくるということです。例えば、正面に来られると怖がる子もいますし、中高生になると近すぎる距離を嫌がったりもします。なので、環境を整えようとすると、まずお子さんと、どういう距離や位置関係が伝わりやすいのか探ってみる必要があります。

 中には、「悪いことをした子どものために親が膝を落とすのは変だ。子どもには親の威厳を示す必要があるだろう」と言う親御さんもいます。しかし、子どもに威圧感を与えなくても、親として「これはいけないことだから退かないよ」という姿勢を持っていれば、親の立場が崩れることはありません。親の威厳のために子どもを威圧しても、しんどいだけです。伝わりにくくなるだけですから。

なるべく周りに子どもの注意をそらすものがない環境で

 他に、環境面で気をつけるポイントは、子どもの目や耳などに刺激を与えるものを避けることです。例えば、子どもを叱っているときにテレビがついていれば、どうしても子どもの目はテレビに行ってしまいます。耳も、テレビの音を拾ってしまいます。

 また、周りできょうだいが騒いでいれば、そちらが気になってしまいます。子どもがおもちゃを握ったままの状態で叱っていれば、おもちゃをいじりたくなってしまいます。子どもに話をしたいときや叱るときは、なるべく子どもの注意をそらしてしまうものがない(少ない)環境を整えましょう。

 子どもに話す内容も大事ですが、環境も大事です。「環境が整っていると話が伝わりやすい」ということは、裏を返すと「環境が整っていなければ話は大して伝わらない」ということです。話す内容がいくら分かりやすくても、環境が整っていなければ意味がないのです。これ、大事です!

 とは言っても、日常生活では、環境を整えようがない場面も必ずあります。その場合はあきらめる勇気を持ちましょう。例えば、車を運転中に後部座席できょうだいゲンカが始まったとき。理想的には、車を停めて後ろを向いて、子どもたちに話しかけたいところです。しかし、車を停める場所がないとか、急いでいて車を停めている時間がないとき、どうしましょうか。運転をしながら、前を向いたまま、大きい声で注意するしかないですよね。

 この場合、環境は整っていません。というか、整えようがないです。だから、当然の結果として、子ども達には大して伝わらないでしょう。でも、これが伝わらないのは親のせいでもないし、子どものせいでもないです。「環境が整っていないから、あんまり伝わらないよなあ」と諦める。そんなことも、しつけでは大切になってきます。

画像はイメージです
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(撮影/鈴木愛子)

『どならない子育て』(伊藤 徳馬 著/出版社 ディスカヴァー・トゥエンティワン)から転載。一部加筆し、表現を変更しました。

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伊藤 徳馬 著/ディスカヴァー・トゥエンティワン

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