女性の雇用拡大が国家プロジェクトになっている今、保育園の待機児童問題解消が急ピッチで進められています。しかし、施設整備の遅れや、現場の理解不足などで、職場復帰を妨げられ、キャリアチェンジを余儀なくされるワーママがまだまだ多いのも事実。そんなママ達が、何をきっかけにどのような選択をしてきたのか。生の声をお届けします。<文中はすべて仮名>

【今回のあらすじ】一級建築士の資格を持つ佐伯ユミさん。正社員で働いていましたが、妊娠を報告した途端「肩叩き」に遭い、何となく納得して26歳で退職してしまいました。<前編>はフリーとして仕事復帰し、娘を連れての地方赴任もこなして実績を積んだあと、2013年に第2子を授かり、「保活の状況が一変している」という実態に直面。その経緯を詳しく語ってもらいます。

「子どもがいたら無理だよね」「土曜、働けないでしょ?」に思わず納得して退職

 私は大学の建築学科を卒業後、建築系企業に正社員として入社しました。社員はおよそ100人で男女比はざっと10:1くらいの割合です。私が担当していた業務は大規模なホールなどの公共施設の音響施設など、専門性の高い分野の設計や内装の仕事でした。実際に設計された通りに建築が行われているか、現場に入って監督する業務もありました。

 仕事が夜遅くなるのは当たり前。建築現場は土曜も平日扱いですから、出勤は当然です。体育会系の雰囲気で、家族の都合などやむを得ない理由でも、定時に帰ろうとする社員がいれば「何だあいつは!」という厳しい視線が飛ぶような雰囲気がありました。

 長女を授かったのは2004年。会社に報告したところ、いわゆる「肩叩き」に遭いました。「子どもが生まれるなら、今の働き方は無理だよね」「土曜に出勤できないだろう」といった言葉を真に受けて、「そうですよね~、土曜に出勤できるわけがないですよね~」と、素直に答えてしまって。様々な経験を経た今なら私も「今の発言、マタハラですから!」と反論できたのかもしれませんが、当時は、仕事一色の生活を送っていたので、言うほうも聞くほうも「それはそうだよね」という感じでのやり取りでした。

 仕事はハードでしたし、子どもを持った女性社員は退職するという風潮もありました。そして、無知だった私は何となく納得し、あっさりと正社員を辞めてしまったのです。その後の苦労を思うと、なぜあのときもっと調べたり、自分から提案をしなかったのだろうと悔やまれるのですが。