2015年から始まる新制度。働くママ&パパが知っておくべきことを、「保育園を考える親の会」代表の普光院亜紀さんに聞きました。

新制度の最大の狙いは、都市部の待機児童問題解消

画像はイメージです
画像はイメージです

Q1. そもそも、今なぜ「子ども・子育て支援新制度」が作られたのでしょう?

A1.  歴史的には、社会福祉基礎構造改革という福祉制度の改革に元をたどることができるのですが、今はもっぱら待機児童対策という面から捉えられることが多くなっています。

 1990年の「1.57ショック」(合計特殊出生率が史上最低になった)の後、国は両立支援を軸とした少子化対策を推進してきました。この間、認可保育園の0歳児保育・延長保育は大幅に充実し、認可保育園(制度上は保育所という)は、会社員の共働き家庭にも使いやすい制度になったと思います。

 これに加え、都市部の共働き化による保育ニーズの急増がありました。都市部ではこの5年ほどで、認可保育園へのニーズがさらに高まってきています。

 日本は今、圧倒的な認可保育園不足に悩む都市部と、子どもの数が減って幼稚園・保育園の充足率が低下している過疎地域の両極端の悩みを抱えていると言えます。

 「子ども・子育て支援新制度」は、2007年から開始された保育制度改革に、民主党政権下で幼保一体化が加えられ、その後修正されて現在の形になりました。2015年度から実施される制度では、就学前の教育・保育の量と質の拡充ということが目標に掲げられています。

 なかでも最大の狙いは、都市部の待機児童問題の解消であり、そのために認可の保育・事業の枠組みを広げ、多様な担い手に保育を担ってもらうことを構想しています。また幼保一体化、つまり幼稚園と認可保育園の一体化を可能とすることで、都市部においては園庭のある保育を増やすこと、過疎地域においては、施設の統廃合が可能になることが視野に入れられていると思います。

幼保の良いところを活かした制度を

Q2. 新制度で促進されている「幼保一体化」の目的はどこにあるのでしょう?

A2. 目的は様々あると言われています。幼保一体化の議論自体は、明治時代からありました。当時は、富裕層が通う幼稚園と、働く庶民のための託児所という実態があり、託児所における教育の質を上げるために幼保一体化が必要だという意見もありました。しかし、昭和初期の調査では、その当時、既に幼保の保育内容には大きな開きがないという報告もありました。

 戦後、学校教育法に基づく幼稚園と、児童福祉法に基づく保育所の制度が開始されました。両者は同じように数を増やし、内容を充実させてきました。保育所には保育所保育指針という指針も整備され、幼稚園と同等の教育を行うようになり、現在に至っています。

 新制度の幼保一体化について、「教育と保育の一体化」と説明されることが多いのですが、もともと認可保育園でも教育は行われているので、おかしな説明になっていると言えます。「親の就労の有無により、子どもの居場所を分けるのは不平等」という意見もありますが、保護者の間では、ライフスタイルの違いによって分かれているものを無理して一緒にする必要はないのではないか、という意見もあります。

 最終的には、幼稚園の良いところ(園庭がある、学校教育として位置付けられている)と認可保育園の良いところ(両立支援ができる、調理室がある、児童福祉機能がある)を合わせて、より質の高い制度にするということが、多くの関係者の間で議論されていたと思いますが、でき上がった制度がそうなっているかといえば、いくつか首をかしげる点があります。

子どもの保育時間や家庭のライフスタイルの違いを、どうまとめるかが課題

Q3. 幼保一体化は順調に進んでいくのでしょうか。

A3. 幼稚園団体の代表者は、幼保一体化に反対でした。全国的には、保育園児数が増加する一方で幼稚園児数は減少していますが、都市部の幼稚園は満員のところも多く、園児集めのために認定こども園に移行しなければならないという状況は無いようです。園庭の無い保育施設が激増している都市部でこそ、幼稚園が認定こども園に移行してくれることを期待している自治体が多いかもしれませんが、今のところ、その動きはあまり見られません。むしろ、子どもの数が少なくなってきている地域の幼稚園のほうが、認定こども園化に積極的です。

 認可保育園はもともと教育も長時間の保育も行っていますので、ある意味、認可保育園そのものが「幼保一体化」施設であるとも言えます。「学校」として学校教育法に書かれていないというだけの話です。

 そんなわけで、幼保一体化が今後どうなっていくのかはまだ分かりません。就労家庭の視点からは、認定こども園での保育、特に3歳未満児の保育や、夕方までの一日を通したプログラムが、認可保育園と同様に充実したものになることが求められます。また、保護者参加の行事が多過ぎたり、母親が働くことに反対したりするような認定こども園でも困ります。今後、子どもの保育時間の違いや家庭のライフスタイルの違いを、認定こども園がどう調整したりまとめたりしていくのか注目されるところです。

Q3. 新制度がスタートしたことで、保育園を利用する立場の親が取らなくてはいけない手続き面での変化はありますか。