―― 仕事はどうやって調整したのですか?

久美子 幸い、私の仕事はある程度、自分でペースを決められる状態でしたので、当初は自分で何とか調整して乗り切ろうと思っていました。

―― 初歩的な質問ですが、不妊の理由が主に男性側にあった場合でも、通院は女性中心になるのですか?

久美子 まず女性側が妊娠しやすい環境を整え、卵子をベストな状態にする。そして、卵巣に針を刺して採卵する。精子はその日にあればいいわけです。そう考えるとやはり、女性が通う回数のほうが多くなります。

―― 採卵のタイミングが大事なんですね。

久美子 はい。排卵誘発剤を使って良い卵子を作り、かつ、良いタイミングで採卵することが大事だということです。どうやっても女性が主体になります。

 女性の体の状態が良くなければ、「治療を一定期間、中断しましょう」とか「今回の治療はキャンセルにしましょう」と診断されることもあるそうです。でもそのタイミングも、いつ来るかは分からない。その一方で、1歳でも若いうちに妊娠したい、というこちらの焦りもあります。

―― そんな日々が続き、仕事にしてもだんだん自分だけで調整するのが難しくなっていったということでしょうか?

「思ったより長引きそうだ」と判断し、職場全員に告白

久美子 チャンスは1カ月に1度あるのだから、そんなに長期戦になるとは思っていませんでした。でも「思ったより長引く可能性が高い」と悟ったとき、逆にチャンスは1カ月に1度しかないのだから、職場のみんなにも隠し通せないと感じました。

 治療には周期がありますので、イレギュラーに仕事を休まざるを得ない期間も、だんだん予測できるようになっていました。

 まず上司に実はこんな状態であり、できる限り調整はするけれど、やむを得ずアポイントやミーティングに穴を開けてしまう可能性もあるということを伝えました。そして、上司からチーム全員にも伝えてもらいました。思いがけず、自分の状況を職場の皆さんに理解してもらえて、非常に安心したことを覚えています。

 企画系の仕事であるため、自分の裁量で予定が組みやすいことが幸いした面もあると思います。いつ自分がいなくなっても、仕事が滞らないように、資料類を整理してまとめ、皆さんに迷惑を掛けないための対策は講じました。ただ、いくら「大丈夫だよ、任せて」と言われても、頻繁に仕事に穴を開けるのはつらい。だんだんいたたまれなくなってきたので、今は、自分から願い出て、時短で働ける部署に異動させてもらっています。