生活シーンの分析から見えてきた、2つのあかりを切り替える暮らし

 「長寿命で省エネのLED電球は、これまで電球に追いつくことを目標に開発されてきました。100W形に匹敵した明るさを実現できたので、次のステップとして考えたのがLEDならではの、明るさ・光色の切り替えです」(鈴木さん)。
 商品企画にあたって、まず、家の中のどこで電球が使われているかを調査した。電球数をカウントしたデータなど過去にないため、国勢調査などで日本の住宅数や部屋数を割り出し、WEB調査も行って、どこでどれくらいの電球がどのように使われているかを推定した。その結果、一番多くの電球が使われているのはリビング・ダイニング(口金数で約5400万個)、次いで廊下(約5100万個)、3位が浴室(約2850万個)と推定。そこで「ダイニング向け」「浴室向け」「廊下向け」を提案することとなった。

LED電球「明るさ・光色切替えタイプ」を企画したパナソニック エナジー&ライフソリューショングループ ライティングチーム 鈴木勝さん(右)と下村俊喜さん。LED電球は電子機器なので、色を替えたり電子機器を搭載するなど、様々なことが可能だ。明るさ競争が一段落したことで、LED電球ならではの付加価値を持たせられる時代になってきたという
LED電球「明るさ・光色切替えタイプ」を企画したパナソニック エナジー&ライフソリューショングループ ライティングチーム 鈴木勝さん(右)と下村俊喜さん。LED電球は電子機器なので、色を替えたり電子機器を搭載するなど、様々なことが可能だ。明るさ競争が一段落したことで、LED電球ならではの付加価値を持たせられる時代になってきたという

 さて、こうしたあかりの下で、人々はどのような活動を行っているのだろう。
 これまでの商品開発であれば、ダイニングだったらまず「食事」。料理が美味しく見えるあかりを作れば良いと考えてきた。しかし「自分の生活を振り返ってもそうですが、ダイニングテーブルでは、食事以外にもさまざまなことを行っています。子どもたちの学習もそうだし、読書をしたり、家計簿をつけたり、裁縫をしたり。帰宅してやり残した仕事の続きをすることだってありますよね」(鈴木さん)。

パナソニック エナジー&ライフソリューショングループ ライティングチーム 主幹 鈴木勝さん
パナソニック エナジー&ライフソリューショングループ ライティングチーム 主幹 鈴木勝さん

 例えば今回の調査で、リビング・ダイニング学習をしている子どもは小学生の約6割。高校生になっても3割以上の子どもが週3回以上、食卓で勉強していることがわかった。料理が美味しく見える電球色では、目が疲れてしまう可能性もある。単体の電球ではカバーしきれない、多様化した生活シーンが見えてきたのだ。

浴室のあかりは人や季節によって真逆の要望も

 それがもっとわかりやすいのが、浴室だ。パパはカラスの行水、ママは長湯と、人によって入浴時間やスタイルが異なる。しかも、夏はシャワーで涼しく、冬はほっこり温泉気分と、季節によって求めるものもまったく逆。だとしたら、爽やかな空間とリラックスできる雰囲気に切り替えられるあかりなら、一年中、快適なお風呂タイムになるのではないか。

ただ点けば良いと思われていた電球で、初めて「欲しい」と思わせる家電のような商品企画を行った。こうした試みはまだ始まったばかり。鈴木さんは「企画者である自分も含め、消費者の常識を切り替えていくことが大事」と語る
ただ点けば良いと思われていた電球で、初めて「欲しい」と思わせる家電のような商品企画を行った。こうした試みはまだ始まったばかり。鈴木さんは「企画者である自分も含め、消費者の常識を切り替えていくことが大事」と語る

 普段は意識しない廊下のあかりも、夜中にトイレに起きたときに「こんなに明るかったっけ」とまぶしく感じることがある。明るすぎるので点けずに歩いて転んだという高齢の親世代がいる一方、防犯のために点けっぱなしで電気代が気になるという人もいる。明るさの切り替えで、省エネ・節約だけでなく、安全性も良くなりそうだ。

 こうしたこれまでの「ダイニングは食事」「浴室は温まる場所」といった思い込みを払拭し、生活シーンをあらためて客観視した結果、空間ごとにオススメのあかりに切り替えることができるLED電球が出来上がった。

 「もの(商品)から考えるのではなく、シーンから考えて作った初めての挑戦でした」(鈴木さん)。