受験戦争を戦った親が感じる、インター育ちの息子の弱点
阪部 日本人でありながら、息子さんはアメリカの大学に挑戦。そして、受験を親子二人三脚で乗り越えたとおっしゃいましたが、具体的にどんなことをされたのですか?
小野さん(以下、敬称略) アメリカの大学に進学するには「SAT(大学進学適性試験)の結果」「高校からの内申書」「推薦書」「志望動機などを書いたエッセー」の提出が必要です。統一試験のテストの成績はできて当たり前の世界。私の母校では、たとえ満点でも3分の1の生徒が落とされてしまうという話を聞きました。
阪部 落ちた生徒達も満点だと。
小野 そうです。特に韓国人やシンガポール人などのアジア系はテストで満点を取るタイプが多い。親の「勉強のさせ方」が尋常ではない。日本の“教育ママ”の比ではありません。
大学の選考では勉強しているだけでは受からない。テスト以外で評価対象になるのが、リーダーシップ、課外活動。とはいえ、すべてを満遍なくこなせるタイプでもダメですね。何か一芸に飛び抜けて秀でている子はテストの点数がいまいちでも入学できることもあるそうです。
そして、運も実力のうち。例えば、高校時代に水泳部で全国1位を取った生徒がいたとしても、世界中の国から出願してくるわけですから“水泳全国1位”だって何人もいます。名門校になれば、水泳チームもオリンピックレベルですから、「全国1位」ではなくて、世界レベルの実力でないと。うちの息子の場合、課外活動をはじめ学業以外の体験は色々していたので、そこは何とかなるだろうと思いましたが、なにせ学業成績が……。
阪部 小野さんご自身は駒場東邦から一橋大学ですから受験勉強の正攻法はお持ちでしたよね? 一緒に勉強されたのですか?
小野 いやいや。息子は理系で数Ⅲレベルです。私は数Ⅲ挫折で文系に転向した口なので、彼が習っている数学や物理はもう教えられない。ただ統一テストというのは、数学と英語の基礎的な決まった解き方の練習で択一式ですから、弱点を埋める勉強をすれば努力しただけ点数は上がるということは間違いない。SATはGMATと似ていて、「昔取ったきねづか」でした。
とはいえ、日本にいるときも含めて、2歳からインターナショナルスクールで育ってきた息子には、試験で点を取ることに対する執念が徹底的に欠落していた。「しょうがないよ。間違えちゃったんだから」といつも「明日があるさ」くらいの風情で(笑)。息子のこうした態度には妻も「やればできるのに、なぜやらないの」とイライラしていました。
阪部 奥さんも日本の受験戦争を勝ち抜いてきた方ですからね。
小野 そうです。息子に「あなたには点数を上げることに対する執念が足りない」って。そこで最低週3日は私と息子で勉強する予定を組み「間違った問題のやり直し」を徹底してやらせました。朝6~7時の早朝時間を利用したり、私が仕事を早く片付けて家に帰ったりして。