中途半端にインターに通わせるより、東大を目指したほうがいい

小野 それは子どもの向き不向き、資質によるでしょう。中途半端にインターナショナルスクールに通わせるくらいなら、東大を目指したほうがいいと私は思います。東大を卒業してから留学するのでも決して遅くないですよ。

 というのも最近、東大を卒業しアメリカに留学した若い学生の本を読みました。彼は子どものころの夢がどうしても諦められずに、慶應の助教授を辞めてNASAに入ったんです。彼が始めた日本の学生達の海外留学をサポートするグループ主催の留学説明会があって、 息子と一緒に初めて東大の構内に足を踏み入れました。

 そこで、東大生のものの考え方やスケールの大きさ・深さに大変感心しましたし、なかでも、できる人はずばぬけてできることに改めて驚きました。特に理系は、世界一流の研究者が集まってくる環境だと確信したというか。ああいった環境で切磋琢磨できれば、その後でどこへ行っても、十分に通用するレベルだと思いました。

阪部 子どもを海外に留学させた場合、最終的に日本に帰ってきたときに、日本の社会に適応できるのかという点も気になります。「褒めて育てるのがいいのか、叱って育てるのがいいのか」という議論と同様、「グローバル人材の育て方」にも正解は無いわけですが……。

小野 インターナショナルスクールに通ったからといって国際社会で通用する力を養えるわけでは決してありません。単なる語学屋さんで終わる人も多いのではないでしょうか。

 極論かもしれませんが、突き詰めていくと、子どものころに「負けて悔しい」という経験をどれだけするか、によるところが大きいのではないでしょうか。友人やライバル達と切磋琢磨する体験をした人は強いです。なかでも、体育会系の人は強いですよ。日本人は一人では勝てないかもしれないけど、チームでなら勝てる。戦い方を選べばまだまだ勝負できます。

 もしも自分の人生をやり直せるなら、私は体育会で歯を食いしばって心身の極限まで努力することをしてみたいとさえ思います。息子は幼いころからボーイスカウトに入団して、真冬の雪山での野宿も経験しました。私も一緒にキャンプに行ったりしましたが、ああいう体を使った集団生活の体験はすごく大事だと思います。

阪部 最後に様々な国籍の若者に触れる機会の多い小野さんがお感じになる、日本の若者と世界の若者の違いを教えてください。

小野 世界と言っても様々ですが、アジアの若者と日本の若者のアグレッシブさやハングリーさはやはり全然違いますね。中国やインドなど人口の多い地域からの生え抜きは、日本人が逆立ちしてもかなわないと思わせるものを持っています。最近は事業承継が約束された2代目、3代目も増えていますが、育ちのよさ、裕福さの面で比べてもアジアの水準は相当高くなってきています。アジアの富裕層は桁外れに裕福ですから。

 一方で、成熟期の日本で最近、 バレエやバイオリンなどの芸術分野やテニスやサッカーなどのスポーツ分野で突出した才能が出てきて、世界の舞台で活躍する人が増えてきたのは、頼もしい限りです。

(ライター/砂塚美穂、撮影/蔵 真墨)