親が国際派だからといって、子どもにそれを押し付けてはいけない

阪部 これまでのお話を伺っていて、息子さんに対して、「自立を促す機会」を意識的に与えているように感じました。小野さんご自身が国際的にお仕事をされていることもあって、やはり子どもにも国内外で幅広く成功してほしいと願っているのでしょうか?

小野 いいえ。子どもの人生は何といっても本人が決めるものです。親はその手助けをするだけにすぎません。親としての責任は大学4年間の学費と生活費を出してあげるまでだと思っています。私にとっては向こう4年分の負債は確定しているものの、息子が大学に入学した今、長い長いトンネルの終わりがようやく見えてきたという安堵感はあります。「大学院に進みたければ奨学金をもらって自力で行け」、と言っています。

阪部 大学が終わったら、いきなり厳しくなるんですね(笑)。それにしても息子さんは、「飛行機を設計したい」という夢を持ち、航空宇宙工学の方面に進学したいという大きなビジョンを高校生時代から抱いていたそうです。やはり父親である小野さんが、多様な価値観を与えてきたことが寄与しているのではないのでしょうか?

小野 そんな立派な父親ではありませんが、私の苦労を見ながら、色々と考えてくれたようではあります。また、インターナショナルスクールの教育の影響も大きいのではないでしょうか。息子が通っていたシンガポールの高校は「Change the World」「Think Different」という教育方針を大切にしていました。アイデアと努力で世界を変えよう、というスタンフォード大の価値観に近いかもしれませんね。

阪部 少し、小野さん自身について教えてください。スタンフォードは多くの起業家を輩出しています。また卒業生は宗教から軍隊までの幅広い業界において、アントレプレナー的な素養を持った方が多いという印象です。金融という歴史ある業界はどちらかといえばハーバード出身者の得意分野のように思いますが、小野さんご自身がスタンフォードを選んだのはなぜですか?

小野 第一に、西海岸は天気がいいこと(笑)。本当に毎日気持ちよく晴れているんですよね。

阪部 街全体が明るくて、「何かをやってやろう」と思わせる雰囲気は大事ですよね。天候が人の気質に与える影響はあながち見逃せないかもしれません。

小野 万が一失敗してホームレスになってもここなら死なないな、ってね。ボストンなら冬に凍え死んでしまいますよ(笑)。まあ、冗談はさておき、真面目に答えると、私が留学した当時、アメリカはまだものすごく内向きだったんです。海外に一度も行ったことがない人が大多数でパスポートを持っている人が少ないくらいでした。

 そんな環境で、ハーバードが常にヨーロッパを意識していたのに対し、スタンフォードはアジアに興味を持っていました。当時から京都キャンパスを持っていたくらいです。力ではなく、アイデアで世界を変えていく、という考え方にも私は強く引かれました。

阪部 これからの時代、子ども達には早い段階に海外で学ぶ機会を与えるべきだとお考えですか? また日本の教育に関して「これでいいのだろうか」と感じることはありますか?