興味関心を持つことができれば、子どもは勝手に知の探求を始めるもの

―― 校長に就任して5年目になりますが、子ども達にはどんな変化がありましたか? 生徒達の雰囲気など、初年度と比べて変わったことを教えてください。

平川 学力学習調査の結果で、特に理科に対する興味関心が倍に増えていました。興味関心があれば、子ども達は勝手に知の探求をしてくれるものだと私は感じています。とにかく、火を付けるまでが大変なんです。ですから、図書館も「探求」をしやすいように改造しています。有名人を連れてきたとしても、すごく興味を持つ生徒は1割くらいでしょう。でも、それでいいのだと思っています。

―― 何度もトライし続けることで、数多くの子ども達が自分の「興味関心のある分野」に出合えるかもしれませんね。特に理科は、教科書だけだと実感しにくいですから、調査結果に出やすいという見方もできますね。

平川 教科書を見るだけでは、説明を聞いても分からない生徒はいるでしょうし、興味もなかなかわきません。理科のある単元では、積水ハウスさんがCSRでやっている「ドクターフォレスト」という無料のプロジェクトを呼んで、校庭で実際に学ぶこともしました。

 また、メンデルの遺伝子の話では、DNA鑑定などについて「現代化学は人間を幸せにするのか」というテーマで考察を深めたこともありました。「あなたは42歳の父親で、家族は奥さんと子ども2人です。自分が遺伝子検査を受けたとします。1回目の検査で何らかのマイナスな結果が出た場合、再検査を受けますか?」という設定で、班ごとに話し合ってもらいました。

 ある女の子は「受けます」と断言。「高度医療でお金がかかるから、それまでに稼げる仕事について治してもらう」と主張していました。片や、ある男の子は「怖いからいいです」と発言していました。

 これから子ども達が生きていく時代は、「選び取る時代」になっていく。彼ら彼女らはそんな時代を100年にわたって生きていくことになります。それを擬似的に体験してもらうことには大きな意味があると思っています。

 外部の方を授業にお呼びするこうした取り組みは、年に数回実施しています。