ひとり親家庭が、経済支援を受けながらも自立していく過程を応援してほしい

―― こういうお話は、男性の心にも響くと思います。以前、国際協力NGOのオックスファム・ジャパンが開いた勉強会で「男性の皆さん、もし明日、奥さんが病気で倒れたら、子育てや介護をしながら今の仕事を続けられますか?」と村上さんが問いかけたことがありましたよね。すると会合終了後に男性の参加者が壇上の村上さんのところに飛んでいって話を聞いていた風景が心に残っています。

村上 そんなこともありましたね。本当はワークライフバランスって男性にとっても重要なのに、なかなか伝わらない。でも、「もし、奥さんがいなくなったら…」と具体的に想像してもらうと伝わるので、男性相手にはあのように話しています。

―― 今日お話いただいた父子家庭の課題を発信するために、団体を作っていらっしゃいますね。

村上 2008年に任意団体として宮城県父子の会を設立しました。2009年にこれも任意団体で、全国父子家庭支援連絡会を作り、2010年にNPO法人化しています。

 これまで、父子家庭への支援拡充を求める意見書を作成し、厚生労働大臣や復興大臣、全国の都道府県議会に要望を提出してきました。おかげさまで、22の都道府県、104の市町村議会で採択されています。

 私達が要望してきたなかで、例えば、児童扶養手当は2010年8月から、遺族基礎年金は2014年4月から父子家庭にも支給されるようになりました。。今後も「母子」に限ったいくつかの支援制度を「父子」にも拡充することを求めていきたいです。

―― その他に、働く親に伝えたいと思っていることはありますか。

村上 「福祉的就労」を認めてほしい、と思います。平たく言えば、生活保護や遺族年金など、公的支援を受けながら働くことが社会に受け入れてもらえるようになってほしいのです。

 多くの方のイメージでは、生活保護や遺族年金は「弱者支援」ですよね。でも、そういった経済支援を受けながら、生活を立て直し、傷ついた心を癒やして再び働けるようになり、最終的には再び納税者になって、支援なしでも自分と家族を支えられるようになる……、そんな再チャレンジを受け入れて応援してもらえたら、と思います。

取材後記

「働く親の再チャレンジを支援することは、当たり前のこと」と私には感じられました。かつて、マネー雑誌の編集部では「年金をもらいながら働く」とか「年金受給できるギリギリラインまで仕事をして収入を最大化する」といったテーマを、当たり前のように扱っていたからです。村上さんが言う「福祉的就労」も、こういう枠組みで捉えれば、認められて当然。再チャレンジして再び納税者になる仕組み、そして子どもに負担が少ない仕組みづくりを、働く親が求めていく必要があると思いました。