親と一日に2時間以上一緒に過ごせている子どもは、父子家庭では65.5%

村上 もう一つの問題は「時間」です。平成23年11月に独立行政法人労働政策研究・研修機構が発表した調査によると、平日、普段、睡眠時間を除いて、子どもが親と2時間以上一緒に過ごしているのは、共働き家庭で89.9%、母子家庭で81.9%ですが、父子家庭では65.5%にとどまります(下図参照)。

 父子家庭の父親は収入を維持しようとすると長時間労働になり、子どもと過ごす時間が極端に短くなってしまいます。私が聞き取り調査をしたある父親は、小学校1年生の子どもと暮らしていますが、帰宅は毎日夜10時を過ぎます。彼は、住宅ローンを返済するため、仕事を変えることができません。子どもは寂しくて、夜、友達の家を一軒ずつ回っている。近くに育児支援をしてくれる親族はいません。

 父子家庭は、究極のワークライフバランスを求められているのです。子どもと過ごす時間を増やすために、雇用が不安定で収入が激減するけれど、転職を選ぶ人もいます。一方、住宅ローンや教育費のことを考えて正社員で高い収入を維持しようとしたら、長時間労働するしかない。

 共働き夫婦なら、配偶者が仕事量を減らして調節できるかもしれませんが、ひとり親にそういう選択肢は無いのです。

―― そういう状況下で、父子家庭のお父さん達は何を求めているのでしょうか?

村上 実は「助けてほしい」という人はほとんどいません。ついこの間も、あるメディアから、かわいそうな事例を紹介してほしいと頼まれましたが、みんな、自分の力で頑張りたいと思っているから、そういうコメントが出てこない。

 シングルファザーが「助けて」というのは、本当に追い詰められて生きるか死ぬかの瀬戸際か、もしくは精神疾患を抱えているような場合です。最後の最後までSOSを出さないし、出せない。「男なんだから」頑張らないと、という思いもあるでしょう。

 やはり、目指すところは「父親が子育てしながら働きやすい社会」です。なぜ、父子家庭になった途端にいろんなことが大変になるのか。考えてみると、夫婦二人でいるときから問題があったことが分かります。要するに、父親が子育てに参加したら働けないような社会の状態が問題なのです。