ひとり親に関する調査や支援は、母子家庭を想定している

―― 父子家庭の父親を追い込むものは、何なのでしょうか?

村上 大きな問題を2つ挙げると、ジェンダー規範の問題と、そして、ワークライフバランスを取ることです。

 その前に、ひとり親家庭の全体像についてお伝えしたいと思います。平成23年度「全国母子家庭等調査」によると、母子家庭は123万8000世帯、父子家庭は22万3000世帯あります。「ひとり親世帯」の7世帯に1世帯は父子家庭ということになります。

 母子家庭の母親は8割が就労しており、これは海外と比べても高いのですが、父子家庭では9割が就労しています。母親自身の年間平均就労収入は181万円、父親は360万円です。

 数字だけを見ると、父子家庭は母子家庭より収入が高く、生活に問題は無いように思われるかもしれません。でも、実情は厳しいです。

 今、引用した調査は「母子家庭等」という名称です。この言葉に象徴されるように、ひとり親に関する調査も支援も母子家庭を想定して作られているのです。多くの場合、シングルファザーは「等」の部分に自分達が含まれることにすら気づきません。

 やや堅い表現でいうと、政策にジェンダーバイアスがあるため、当事者である父親を、受けられる支援から遠ざけてしまっているのです。

―― 確かに言葉の問題は大きいです。出産前に受ける講習を「母親学級」から「両親学級」に名称変更する自治体が多い昨今ですから、「母子家庭等」の表現も考え直してほしいですね。