「ふすま」のある暮らしを現代風にアレンジ

 第8回のコンペテーマは「現代の共働き夫婦の子育て住宅」というもの。毎日が忙しい共働き夫婦にとって、子どもと過ごす家での時間は貴重だ。家族が集まりやすく、お互いの気配を感じながら暮らせる空間が求められる。

 この住戸では通りみちと寝室との出入り口をすべて引き戸とし、開け放していても扉がじゃまにならない配慮がされている。壁のところどころに「窓」があり、そこも引き戸で開け閉めできるところも面白い。

出入口の引き戸をすべて閉めたところ(写真右側)
出入口の引き戸をすべて閉めたところ(写真右側)

壁にも窓があり、引き戸で開け閉めできる
壁にも窓があり、引き戸で開け閉めできる

 「家族それぞれが意識しなくても、日常感覚でつながりを感じられる空間にしました。昔から日本の住まいに定着している『ふすま』のあるライフスタイルを取り入れています。角住戸ということもあり、引き戸を開けておけば光や風も2面から自然に入ってきます」(小野氏)

 また寝室の壁が斜めになっているため、部屋同士の仕切り方によって広さに変化が生まれる。分譲時は3つに仕切られ、最も大きな部屋が主寝室という設定だが、家族構成の変化に応じてレイアウトを変えることもできるだろう。

 一方、水回りスペースは玄関側からトイレ、浴室、洗面室、キッチンが並ぶスタイルだ。キッチンと洗面室の仕切りも引き戸となっており、自由に行き来できる。キッチンと「通りみち」の間にはちょっとしたカウンターが設けられ、食事やお茶などを配膳しやすくなっている。

キッチンから洗面室を撮影。通り抜けられる。キッチンの窓に配膳などに使えるカウンターがある
キッチンから洗面室を撮影。通り抜けられる。キッチンの窓に配膳などに使えるカウンターがある

建築家の小野裕美さん。共働きの家庭を意識し「つながりを感じられる空間」にしたという
建築家の小野裕美さん。共働きの家庭を意識し「つながりを感じられる空間」にしたという

 「水回りが一列に並んでいることで、料理や洗濯を同時にこなしやすくなっています。キッチンのカウンターでコーヒーなどを受け渡しすれば、ちょっとしたカフェ感覚も味わえるでしょう」(小野氏)