フレキシブルに使える「通りみち」のある住まい

 玄関から室内に一歩入ると、白い空間が広がり、バルコニー側の窓越しに植栽の緑が目に入ってきた。床には大判タイルが張られ、天井にはスポットライトをしつらえている。マンションの一室というより、スタイリッシュなカフェのイメージに近い。

玄関を入ると、バルコニーまで見通せる
玄関を入ると、バルコニーまで見通せる

 だが、ここはまぎれもなく、分譲中(2014年11月20日時点)の新築マンションの室内だ。日経DUALでも以前紹介した三井不動産レジデンシャルによる「第8回三井住空間デザインコンペ」で最優秀賞を受賞した作品が、実際の住戸として建築され、竣工したので見学会にお邪魔した(「建築家に聞いた! 家族団らんに“効く”間取り」も参照)。

小野裕美さんが設計した部屋の模型。室内の中央を「通りみち」が斜めに走る
小野裕美さんが設計した部屋の模型。室内の中央を「通りみち」が斜めに走る

 建築家の小野裕美さんが設計した住戸は『広がる通りみち』と題され、全体が“水回り”“寝室”“通りみち”の3つに分かれている。「通りみち」とは通路であると同時に、リビング・ダイニングでもあり、この家に住む人や来訪者が集う共有空間でもある。窓を開け放てば、心地よい風や光の“通りみち”ともなるだろう。

 そのユニークさは平面図にも現れている。室内の中央を「通りみち」が斜めに走り、バルコニー側にいくほど広くなっている。壁を斜めに広げることで、実際の面積以上に空間が広く見える効果もあるという。

 「室内の廊下やLDとの仕切りを取り払い、寝室と水回りを分けたシンプルな構成にしました。そうすることで、中央の『通りみち』に広さや自由さを確保しています。この共有空間では食事をしたり、集まっておしゃべりをしたり、趣味や勉強に打ち込んだりと、フレキシブルに使ってもらいたいですね」と、小野さんは作品の狙いを話してくれた。