雪が積もると狂う生活時間 古い企業体質を変えたいが、一社員の非力を痛感

―― 都心での両立生活との違いは何だと思いますか?

佐藤 場所にもよりますが、冬に雪が積もるのは特徴だと言えるのではないでしょうか(笑)。私は車で通勤していて、雪が降ると通勤時間が倍になります。19時には保育園に到着していなくてはならないのですが、雪の日は普段通り18時に退社していては間に合わない。そんなときは義両親にお迎えをお願いしたいと思っています。

 朝も会社周辺の雪かきをしなくてはいけない。20~30分かかる大仕事です。勤務時間プラスアルファの時間を見て、いつもより1時間以上早く家を出ることもあります。雪が降らなくても、路面が凍結するだけでも通勤時間が変わってくるので悩みの種です。

下村 企業側の意識がまだまだ古いと思います。というのも絶対的にロールモデルが少ない。子育てを奥さんに任せきりだった世代がまだまだ管理職に多いので、「育児を理由に」というのがピンとこないのではないでしょうか。女性側も、伸び伸びと地に足の着いた子育てをしたいと思っている人は多い。男社会に「割って入ってまで仕事をする」というマインドの人は都心に比べたら少ないかもしれません。

 だから、本当に女性の力を生かしたいなら、やはり企業という「土俵」の側を変えない限り難しいですよね。女性の管理職を意図的に増やすのは賛成です。分煙化なんかもそうですが、中央でムーブメントが起こると「そういう時代なんだから変わらなきゃいけないらしいぞ」と、年配者の腰も上がりやすい(笑)。そういう好事例が地方に波及するのは歓迎です。

佐藤 私の勤務先では、締め切ったオフィス内でたばこを吸う上司がいたので妊娠中は本当につらかった。また、地方での共働き生活は、自然がいっぱいでのどかなイメージを持たれることも多いのですが、実際のところ医療費給付や年休消化の徹底など、都心のほうが制度がしっかりしていて驚くこともあります。

 DUALで紹介される先進企業は規模も大きいところが多いですが、岩手は中小企業がメーンです。そういう意味でも、都心とはまた違う両立支援のあり方が求められていると言えるのかもしれません。

 いずれにせよ、DUAL世帯が増えている時代だからこそ、地方の行政も企業ももっと本気で共働き世帯を応援してほしいと思います。

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(取材・文/日経DUAL編集部)