共働き世帯にとって保育園や学童の運営など、子育て支援を担う自治体は頼りになる存在であってほしいもの。このたび日経DUALでは、読者に代わって、自治体の首長への突撃インタビューを開始しました。最初は東京23区に取材を依頼し、区長に質問をぶつけてきました。

初回は渋谷区。商業、サービスの中心地というイメージが大きい区ですが、桑原敏武区長は年収400万円以下の世帯の保育料無料をはじめとした子育て世代への政策を、「ワンマン」と揶揄されながらも迅速に行っていました。「自分が残した成果を語るのは大嫌い」という“昔気質ワード”を連発しながらも、自ら現場に赴き、働く親からの直訴のメールにすぐに対応するなど、暮らしやすい区を目指しています。外ではあまり語らない桑原区長の貴重なインタビューです。今渋谷区に住んでいる人も、これから引っ越しをするかもしれない人も、区内の子育て・教育環境や、首長の人となりや指針をじっくりお読みください。

仕事への野心はあるが、ポジションへの野心は無かった

桑原敏武 区長

1935年愛媛県生まれ。慶応義塾大学法学部卒業後、東京都職員となり、後に渋谷区職員に。渋谷区教育委員会社会教育部長、渋谷区企画部長、渋谷区総務部長、渋谷区助役を経て2003年4月渋谷区長選で当選、現在3期目。

桑原敏武・渋谷区長
桑原敏武・渋谷区長

DUAL編集部 桑原区長は四国のご出身ですね。大学入学を機に上京されたのですか?

桑原区長(以下、敬称略) 6歳のときに父を亡くし、松山にある祖父母の家で育ちました。10歳以上離れた兄と姉がいて、当時既に上京していました。兄姉に助けてもらいながら、私大に進学。学費免除制度と奨学金を利用したんです。

―― 卒業後、東京都の職員になったきっかけは?

桑原 進路については実は何も考えていなかった、というのが正直なところ。法学部で行政法の講義を受講していたのですが、単位がもらえないと言われたため、必死で勉強しました。都の試験を受けてみたら、中身が行政法の講義そのものでね。フタを開けてみたらトップで合格していた。人生何が役に立つか分からない(笑)。