―― 国の基準だと、400万円の人は月額1万9500円です。大幅に下げた理由は何でしょう?

桑原 保育料の負担が高過ぎると私が思ったからです。

―― 世帯年収1000万円の場合でいうと、国の基準では月額6万1000円、渋谷区は1万9920円。共働き世帯にもありがたい金額です。

学童館を一斉に廃止 全員が入れる学童保育を各小学校構内に

桑原 2004年からは「放課後クラブ」というものをつくりました。学童保育をしていた「学童館」は廃止。そして、小学校の余裕教室、体育館、図書室を何でも使って、学童保育をすることにしたんです。学童保育の待機児童は一気にゼロになりました。

 理由は、そのときの時点で、学童館が10館足りなかったから。一年1館で10年かけて新設したのでは間に合わない。だから小学校を使おう、という発想です。当時は怒られましたよ。

―― なぜでしょう?

桑原 学童館を廃止することによって、子どもの学ぶ環境を奪ったというのがその理由です。学童館は他の施設に転用しました。発達障害の子どもの相談センターをつくり、専門のスタッフを置くこともしています。

―― 福祉や教育、コミュニティーの場にしたのですね。

桑原 それも「見えてきた」からやったことの一つです。最近強く思っているのは、子どもはただ「預かる」のでなく「育てる」ことが大事だということ。「待機児童ゼロ」を目標に掲げるだけでなく、良い環境を用意したい。良い環境を与えれば、子どもは必ずよく育っていくんです。いい教育こそが何より必要なものなんです。