教育の秘訣は生徒を尊敬することにある

エマーソン

『世界名言大辞典』(明治書院)

 19世紀のアメリカの思想家、ラルフ・ワルド・エマーソンの言葉です。彼の言葉は前回(「子どもが病気になったときに思い浮かべた名言」)も取り上げています。アメリカの知的文化に大きな影響を与えた人物として評されていますが、こうした短いシンプルな言葉にもいちいち説得力があります。

 一人の親としては、この言葉の中の「生徒」を「わが子」に置き換えてみて、肝に銘じておきたいものです。幼い子の前では、親は万能の存在でしょう。だからといって、それだけで親がエラくなった気分でいるのは禁物だと思います。幼い子どもだって、立派な一つの人格であり、既に大人にはない感性や想像力を芽吹かせているかもしれません。

 子どもが突飛な絵を描いたとき、2歳9カ月の今なら「ワァ、すごいねぇ!」と驚きと感動をもって接することができていますが、子どもが真っ赤なキリンを描いてきたら、ついつい「キリンは黄色で描くものだよ」と指摘しまうのではないだろうか。ある年齢に達したら、「こんな絵はおかしい」「この色は間違っている」と指摘してしまうのではないだろうか。まわりが決めた基準に合わせて、子どもに何かを教えようとしてしまうのではないだろうか……。

 幼稚園の願書をもらいに行きながら、そんなことを考えた秋の夕暮れでした。

 

 

(文・写真/大山くまお)