エリック・カールは、『はらぺこあおむし』をはじめ、多くの作品が世界中の子ども達に愛されているアメリカの絵本作家です。ウチの娘も『あおむし』の大ファン。『えをかくかくかく』は2011年に描かれたカールの新作で、絵描き志望の青年が色鮮やかな「あおいうま」や「きいろいうし」を次々と描く作品です(日本では2014年に刊行されました)。

 カールはこの作品を、ドイツの画家、フランツ・マルクに捧げています。19世紀末、マルクはカラフルな青い馬や黄色い牛の絵を次々と発表し、新しい美術に挑戦して賛否両論を巻き起こしました。カールはマルクの死後である1935年、6歳のときにドイツに移住していますが、当時のドイツはナチス政権のコントロール下。絵が大好きだったカール少年が12歳のとき、美術教師は「堕落した美術」としてナチス政権に禁じられていたマルクの絵を見せたのだそうです。それ以来、カールはマルクの絵から多くのことを学んで、影響を受けたといいます。

『えをかくかくかく』の絵描き志望の青年は、マルクの姿であり、カール自身の姿であり、カールが大切にしている自由な発想を持つ子ども達一人ひとりの姿でもあるのでしょう。事実や常識を子に伝えるのは親の大切な役目ですが、「これは正しい」「これは間違い」と教えすぎて、子の頭や心をコチコチにしないようにしたいものですね。

想像力は、知識よりも大切だ。
知識には限界がある。
想像力は、世界を包み込む。

アルベルト・アインシュタイン

『アインシュタイン150の言葉』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)

 相対性理論を提唱した天才物理学者、アインシュタイン。誰よりも知識を積み重ねてきたはずの彼が、知識よりもさらに大切なものとして挙げたのが「想像力」でした。学校で勉強することも大切ですが、想像力を伸ばしていくことはもっと大事なこと。勉強を重視するあまり、子どもが持っている想像力の芽を摘んでしまっては何にもなりません。大人の世界でも、知識の積み重ねを活かすのは、ほんの一瞬のひらめきだったり、突飛な想像力だったりします。

 アインシュタインは、「創造的な表現をすることと知識を得ることに喜びを感じさせることが、教師にとって最高の技術です」という言葉も残しています。「教師」の部分を「親」に入れ替えると、重大な役目を負ったような気になって背筋が伸びる気分になりますね。親だって日々学んでいかなければいけません。