小林まどかさん(仮名)は、今の仕事を、心から大切に思っている。職場は私立の保育園。仕事は、通ってくる園児や保育士をはじめとする職員の給食を作ること。園児達の食育や、クッキング実習に携わることもある。2013年4月、開園スタッフの正社員として、約100倍の難関を突破して採用された。46歳のときだった。
「合格の知らせをいただいたときは、信じられない思いでした。まさか、この年で正社員での再就職がかなうなんて、夢にも思っていなかったんです。それもずーっとこだわってきた、『食』関係の仕事です。夢がかなったんです」
正社員として働くのは、実に21年ぶりだった。短大卒業後、正社員で新卒入社した大手クレジット会社を、25歳で辞めて以来のことである。以後、出産前に1年半、10年間の専業主婦生活を経て再び勤め始めた職場でも、ずっとパートで働いてきた。
「正社員になって変わったのは、仕事と家庭を両立させるにあたっての基本的な考え方です。パートのときは、できるだけ家族に迷惑をかけないように、常に時間をやりくりしているような感じでした。でも、正社員はそれでは無理だと早々に気づきました。家族の積極的な協力なくしては正社員では働けない、という考えになったんです」
それくらい生活はガラリと変化した。勤務時間が長く、残業もあり、会議やミーティングで遅くなることもある。でも、やりがいは本当に大きい。
「採用されて、よかった」。そう、心から思っている。
10年ぶりの社会復帰。「洋菓子店」でのパートに、予想外のやりがい
今では「食」に関する強いこだわりを見せる小林さんの出産前の勤務先は、クレジット会社とコールセンター。食には無関係な職歴だが、その後10年間、専業主婦として夫と2人の子ども、そして同居する義父母の食事を日々作るなかで、食への興味と関心が次第に強くなっていったという。
「なので、10年ぶりの再就職でも、パート先にはこだわりました。子どもの教育費が今後かさむことも考えての再就職でしたが、食に関すること、自分が興味のある仕事に絞って探したのです。そうして見つけたのが、個人経営の洋菓子の店でした」