正社員になって得られたのは「家族の協力」「自信」「安心」

「私は、給食調理は初心者でした。年齢からしても、私を採用したことは会社にとって、冒険だったと思います」と小林さん。

 合格の理由は「わからない」。でも「ともかくやる気を伝えたこと」また、若い人にはない「実際の子育て経験」が買われたのかもしれないと思っている。

 念願かなっての「正社員」。でも正社員になり、働き方はまったく変わった。自分の自由になる時間が格段に少ない分、家族の協力が不可欠だということに、早々に気が付いた。

「うちでは、例えば食事の支度は、短時間に出来上がるよう、皆で手分けするようになりました。休日には夫が、買い物や料理を、進んで担当してくれます。さらに娘が、洗濯物を干したり、取り込んでくれたりしています」

 家族の協力に加えて「正社員になったからこそ得られた」ものが2つある。自信と安心だ。

「自信は、この年でも雇ってもらえたこと、そして、自分の夢をかなえられたことによるものです。安心は、無期雇用契約で、ずっと働けることからです。いずれも、パート時代には感じられなかった、私にとってとても大きなものでした」

 正社員としての勤務を始めて1年半が経過した今、小林さんはこう思っている。

「子どもたちの記憶に残ることをやっていきたいと思っています。といっても大げさなことではなく、毎日毎日おいしい給食を作り、喜んで食べてもらうこと。そして季節や時節にあった食育をして、その子の人生を少しでも豊かにしてあげられたら、と思うんです。例えば、その日のメニューにそって旬の野菜を紹介したり、調理実習で季節の野菜を使ってトマトケチャップを作ったり、お月見団子を作ったり・・・いろいろ工夫しながら、食に興味を持たせるようにしています」

 自分の役割を果たし、足跡を残せることに、大きな喜びを感じている。

(取材・文/平田未緒)