「家でできる連載のお仕事ください」なんて言っちゃってた日々

 私も夫も、一般的な会社勤務の人よりも、自宅で仕事をする時間が多い。私は大学の授業の準備をしたり、このような連載の原稿を書いたりする。夫は物書きなので当たり前なのだが、私よりもさらに在宅仕事率が高く、家で原稿執筆するのが日常だ。

 という状況を説明すると、「いいですね。家で子どもを見ながら仕事できますね」と言われることがよくある。普通そう思いますよね。私も子どもを産む前はそう思ってましたとも。そして、「家でできる連載のお仕事ください」などと方々にお願いしたりしていた。

 ところが、実際にトライしてみると、「子どもを見ながら仕事」がいかに難しいか、いかに非現実的なことかが、徐々に分かってきた。

 産まれた直後はもちろんのこと、首が据わらない時期、寝返りができない時期は、おなかがすいていないか、オムツが汚れていないか、ちゃんと呼吸が確保されているか、頻繁に確認しないと心配で、他の部屋に行って仕事をするなんてできなかった。

 立っち、あんよをし始めて行動範囲が広がると、危険も増えて、やっぱりずっと見守っていないとならない。スタスタどこにでも歩いていき、さらにわんぱく度が増してきた2歳の息子(通称、虎)は何をしでかすか分からないので、これまた目が離せない。結局、ずっとここまで目が離せないでいるのだ。

 それでも、まだ一日の大半をベッドで寝て過ごしてくれていた時期は、すぐそばのソファにパソコンを持ってきて、原稿を書く程度のことはできた。本来ならデスクに座って3時間くらい集中したいところだが、それは贅沢というもの。1000字程度の原稿を書くのも一日がかり。泣いたらお世話して、そのうち寝てくれたらまた仕事して、泣いたら仕事を中断してまたお世話して。その繰り返しでも、なんとかなった。

 ところが、いたずらするようになってからは、パソコンなんて出そうものなら、すぐさま虎の餌食に。キーボードをめちゃくちゃにたたき、よだれでベタベタにして、「キャッキャ」と遊ぶ。最初は「やめようね」と優しい声で言っていても、それがずっと続くと、仕事がはかどらないでイライラが募る。最後には「もう、邪魔しないでよ」と声を荒らげることになってしまい、自己嫌悪に陥る。

 そして、悟るのだ。子どもの面倒を見ながら仕事するなんて、無理なんだな、と。