――映画に登場した安田家もそうですが、再婚などで、血のつながりのない親子関係が増えていますよね。私が気になってしまうのは、血のつながりのない子と、実の子を一緒に育てる場合、愛情の持ち方に差が出てしまわないかということです。この点に関して、どう思われますか?

豪田「それは当然、人間だから可能性としてはあり得ると思います。実際に、そういうことで事件や事故が起きていると報道されていますよね。でも、安田さんに関しては、全く問題はないんじゃないかと確信しています。映画を見ていただくと、とてもよくお分かりいただけると思うのですが、血のつながりがなくても、一緒に過ごした濃密な時間やコミュニケーションが、感情的に強い親子関係を作っています。映画の中で、5歳の息子さんと血のつながりがない安田慶祐さんという方は、自分達には血のつながりがないんだよ、と息子さんに伝える場面があります。当事者の安田さん達だけでなく、撮っていた僕も、観ていただく方々にとっても、ハラハラドキドキする瞬間ですが、あのように子どもと向き合えるかどうかというのは、血のつながりのあるなしに関わらず、すごく大事なことだと思います」

牛山「子どもと向き合い続けるということには努力が伴うので、まぁいっかな、と避けてしまいたくなると思いますが、子育てというのは子どもと向き合い続けることなので、ぜひ映画から何かしらのヒントを得ていただけるとうれしいですね」

血がつながらなくても、強い親子関係を作っている安田家
血がつながらなくても、強い親子関係を作っている安田家

――出演者の方々から信頼され、家族のような関係になっているのですね。「うまれる」シリーズのドキュメンタリーを製作されるのは、長い年月をかけていらっしゃいますし、時にはとてもつらいこともあるのでは、と感じました。つらい場面に立ち会ったり、出演者の苦しい内面を打ち明けてもらうとき、ご自身を支えているのは、どんなことでしょうか?

豪田「つらい…というのとは、少し違うかもしれませんね。例えば、映画に出ていただいた今賢蔵さんという方は、42年連れ添った最愛の奥様を亡くされて、映画の中でそのつらいお気持ちを語られています。もちろんその苦悩は僕らにも伝わってきますが、そういうお話を聞かせてくれるありがたさを感じることのほうが大きく、だからこそ役に立ちたいと思うことのほうが多いです。もしかしたらそれは、夫婦でやっているからかもしれません。僕1人で撮影に行っていたら、精神的に厳しくなることもあると思いますが、夫婦でやっていて、心の奥底で支え合っている部分があるから、それが絶対的な安心感につながっている。だから、『つらい』だけで終わらないでいられるんじゃないかな」

牛山「そう言われてみると、そうかもしれない(照れ笑い)。確かに、つらいと感じるよりも、何ができるかを考えるほうが多いですね」

豪田「子育ても1人だけで取り組んでいたら、つらくなってしまうときがいっぱいあるかもしれませんが、夫婦2人で取り組めば、多分つらいだけのものじゃなくなると思うんですね。僕らは2人で娘の子育てを3年11カ月やってますけれど、楽しいことのほうが圧倒的に多いですね」