世界で活躍するレストラン「NOBU」のオーナーシェフ、松久信幸さんと、松久さんの長女、純子さん。ビジネスが軌道に乗るまでの苦労をいかに乗り越えたかお話しいただいた前編は、大変好評でした。
 後編では、松久さんのビジネス戦略のほか、4歳児の母である純子さんの子育て、松久さんの孫育てについて、羽生編集長が迫ります。

――世界中に35店舗のお店がありますが、松久さんは、どのように各店へ行かれているのですか?

松久信幸さん(以下、松久): 年間10カ月は家を離れ、旅をしています。例えば、今日(取材日)と明日は僕が店に立つ「NOBU WEEK」があって、明後日からはドバイへ、その後ドーハ、ロンドンへ行く予定です。それぞれの店での滞在日数は基本的に2~4日間。それを10カ月でローテーションしています。東京だけは、月に1回は、必ず来るようにしています。

 僕の中で、グループの地域をアジア、ヨーロッパ、アメリカと大きく分け、アメリカなら、ロサンゼルス、ニューヨーク、サンディエゴ、テキサス、マイアミ、ハワイと順に回っていきます。日本に帰ってきたときは、香港、クアラルンプールに寄るようにしています。11月にはフィリピンもオープンするので、今後はフィリピンにも行けますね。ヨーロッパなら、ロンドン、ミラノ、ギリシャ、モスクワをまとめて回るようにしています。

 ずっと旅をしている状態ですから、健康管理のために毎日運動をし、汗をかいてストレッチをして、と少しでも筋力をアップできるよう心がけています。

――ご自身のお名前の冠がついた数々のお店をマネジメントしていらっしゃいますが、リーダーとして日々どのようなことに気をつけていますか?

松久:  NYに「NOBU」を立ち上げてから、20年が経ちました。この20年間で、様々な人が育ってきていると感じています。その一人が、コーポレート・ディレクターとして活躍してくれている田原(史啓)君です。週に一度、世界中の「NOBU」についてスカイプを通して報告してくれます。各地のマネージャーが集まってスカイプで打ち合わせをしたり、新しい店舗ができるときには、どんな人員を配置するかなどを相談したり。今まで僕がやってきた役目を、彼が担ってくれているのはとてもありがたいことです。

 新しい店舗ができる際は、必ず「NOBU」の経験者を送ります。例えば、ニューヨークでのオープンの際は、僕が3カ月現地へ赴き、コンセプトや理念を伝えました。その他のお店も、オープンする際には、世界中から経験者を集め、現地へ行ってもらいます。

 教えを受けた若い人が育っていくと、「いつも同じ場所にいるのではなく、自分も世界に出てチャレンジしてみたい」と思うようになります。さらに「将来、世界を見てみたい」という人が集まってきます。そうして、若い人もどんどん育っていきます。

 今は、一つのレシピができ上がったら、ネットで世界中にさっと届けることができます。そして、実際に僕が店を回りながら、新しいメニューのテイスティングや軌道修正をして、NOBUの料理を追求していくんです。