一生懸命やり続けることで、結果が自分に返ってくる

松久: 先月、ニューヨーク店が20周年を迎えました。田原君がアレンジして、650人のゲストを招き、50人のシェフとマネージャーを世界中から呼んで、パーティーを開催したんです。こういうことは僕1人では絶対にできない。チームが大きくなると、1人ではできない力が生まれてくるのです。

 ただし、マネージャーやディレクターなどのポジションは、みんなが簡単になれるものではありません。そのポジションに就くのは大きなチャンス。「絶対にそのチャンスをものにするように」と伝えています。

 結果は最初から求めるものではなくて、一生懸命やった人に自然とついてくるもの。僕も、最初は自分の生活をするために、1カ月450ドル程度の給料で、とにかくお客さんに喜んでもらいたいと、心をこめてすしを握り、必死に料理を作ってきました。結果、そのときのお客さんが、今店に来てくれているのです。

 ですから、「とにかく一生懸命やりなさい。失敗してもいい、失敗から学びなさい。店のためにやっているかと思うかもしれないけど、いつか必ず君達の元にいいものが戻るんだよ」と、僕の経験を通してスタッフに伝えています。

苦しいことは自分に与えられた“宿題”

松久: 僕は今65歳なので、運動場のトラックに例えるなら、第4コーナーを回って走っているところ。自分がどこまで行けるか、最後は走るのか、歩くのか、這うのかは分かりません。人間には必ず終わりがありますが、最後まで前に進んでいたいと思います。

 苦しい時代もありましたが、それはいい意味でも悪い意味でも、自分に与えられたチャンス=宿題。宿題は、ちゃんと解き進んでいかないといけない。店の若い人にも、娘達にも、「とにかくやって、やって、やって、それでいつか『ああ、やってきてよかった』という気持ちを味わってほしい」と伝えています。壁にぶち当たったとき、周りは何らかのサポートはできますが、その壁を乗り越える努力ができるのは本人だけ。やるか、やらないか、それで人生が決まっていくと思うのです。