10月5日、日曜日。天気図では、白い渦がどっかり九州地方に居座っている。今日は運動会。やるべきか、やらないべきか。雨雲レーダーを何度も更新し、迷う。学校に着くと、雲がどんより重く、通り雨で地面がぬれている。風が強い。強風注意報が出ている。5・6年組体操、「10人タワー」の頼りなさを思い出す。同時に、今日だからこそ家族で見に来られる家庭、働く親達に想いを馳せる。雨用プログラムでやりきるか、延期するか。2日後は平日開催で、給食になる。運動会はできても、家族でお弁当を食べられない。
職員室に入ると、体育主任が寄ってきた。最終決断は、校長がする。今まで仕事をいろんな形でしてきて、これほど嫌な決断は無かった。校長によっては、強行するタイプの人もいる。私はどうしても、子ども達が必死でがんばってきた組体操での事故を避けたかった。テントが飛ぶ事故も起きている。
「延期にしましょう」
「中止を決めれば晴れる、決行すれば降る」!?
保護者にメールを流し、PTAの方に助けてもらってテントや万国旗を片付ける。子ども達は3時間授業だ。教頭先生が言う。
「中止を決めたら晴れる、決行したら降るってのは、よくあるんですよねぇ。開会式で土砂降りになったことありますよ」
そのジンクス通り、雨は降らないどころかうっすら晴れ間まで見えている。職員室で「降ってないやん! 今からやろうや!」と訴える児童もいた。学校全体が、失望の雲で覆われたような半日。降ってくれ。子ども達とお弁当を作りかけていた保護者と、教職員達を納得させるような大雨が! 一瞬でもいい!
……情けない話、校長室から薄明るい空を眺め、雨を願った。悔しい。近隣の小学校が先に中止を決めていたのも、決断理由の一つだった。後日、その校長先生もぼそっとつぶやいていた。
「5日、ぎりぎり運動会できたなぁ」