男女雇用機会均等法の第1期世代として「働くこと、生きること、子ども」をテーマに、20年以上保育問題を取材してきた、ジャーナリストの猪熊弘子さん。DUAL 世代の関心事でもある早期教育に関してどんな考えをお持ちなのか興味のあるところ。先ごろ、世田谷・玉川区民会館で行われた世田谷区長・保坂展人さんとのトークイベント「うちの子にとってよい『教育』ってなんだろう?」からダイジェストを紹介します。

子どもにとってよい教育って? 早期教育ってどうなんだろう?

猪熊弘子さん(以下、猪熊) 今日は「よい教育って何だろう?」というテーマでお話をしていきますが、まず大前提として皆さんに知っておいてほしいことがあります。拙著『「子育て」という政治』の最初の章にも書いたことなのですが、幼稚園と保育園の違いに関して誤解している方が少なくありません。

 よく「幼稚園では教育をするが、保育園では教育をしない」というフレーズを耳にします。このことに不安を感じている親御さんも多いようですが、

・ 保育園は児童福祉法に基づいて設置され、保育の中身は保育所保育指針に基づいており、0歳からの子どもを預かる
・ 幼稚園は学校教育法に基づいて設置され、その教育の中身は幼稚園教育要領に基づいており、満3歳からの子どもを預かる

…という違いはあっても、「子ども達に身に付けてほしいこと」の狙いや「施設に求める教育」について国が定めていることは2008年以降、ほとんど違いがないのです。むしろ、園ごとの差の方が大きい。

保坂展人さん(以下、保坂) 猪熊さんのご著書は横浜市の待機児童の話から始まるのですが、待機児童に関して世田谷区はワーストワンといわれています。しかし、数字のトリックがありまして、横浜市と同様に換算すると、わが世田谷の待機児童の数は半減する。ご著書でも触れていただいているように、世田谷はありのままの現状を知ってもらおうという方針に基づいた数字を公表しています。

 本日のテーマは「最新、斬新、型破りトーク! よい『教育』って何だろう?」です。では、ざっくばらんに伺いたいのですが、猪熊さんは最近「子ども達の教育」に関して、どんなことをお感じになっていますか?

猪熊 子育て世代のパパやママから相談を受けるなかで一つ感じることがあります。ちょっと乱暴な言い方かもしれませんが、「いかに効率的に、賢い子を、間違いなく育てるにはどうしたらいいか?」ということにとらわれている人がすごく多いように感じるのです。

 「賢い」というのは、一日でも早く本が読め、字が書けるようになるという早期教育だけでなく、最近では例えばiPadで何ができるかというような、IT機器を使えることまでをも含むようになってしまっています。


保坂展人・世田谷区長(左)と猪熊弘子さん(右)

保坂 僕は実は80年代に早期教育の問題や校内暴力事件といじめの問題などを取材し、テレビのリポーターのようなことをしていた経験があるんです。今日はそのころに見聞きした話もしたいと思っているんですが……。

猪熊 子どもにはできるだけ「よい」と思われる教育を惜しまず与えたいという親の気持ちは、そのころも今も共通だと思いますね。

保坂 90年代のバブル崩壊後、教育投資に関して一種の遅れてきたバブルというべき現象がありました。例えば「2歳で本が読める」とか「2歳でラクラク算数」なんて本がたくさん出版された。そうした本の帯には大概「3歳、4歳ではもう遅い」という脅し文句さえありました(笑)。

猪熊 公文式が登場したのもそのころ。

保坂 当時、首都圏に進出したばかりの5人しかいなかった公文数学研究会で、17歳のころの僕は教材係を担当した経験があるんです。あのころの行き過ぎた早期教育に対して「本当にこれでいいの?」と思うところがあり、その縁もあって90年代前半に『ちょっと待って!早期教育』という本も書きました。その本を読んだ方からたくさんのお手紙をもらいまして。それをきっかけに会いに行った人の中の一人にこんなお母さんがいました。

次ページから読める内容

  • 体がカーッと熱くなり手を上げてしまう
  • 「優秀な子」というのは親にとっては、よくできた「分身」
  • 無限大に思えた自分の可能性が、大人になるにつれて失われていく現実
  • 超優等生の多くが、中学2年生前後でバーンアウト

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