家庭における性暴力被害の調査によると、加害者はほぼすべて実の父親だった

 この調査が明らかにした不都合な真実があります。それは、加害者はほぼすべて、実の父親であったということです。これは、DV家庭において、加害者は配偶者だけでなく子どもも虐待している、しかも性的虐待をする事例が多いことを意味します。読者の大半は、子どもを愛しきちんと育てている「普通の親」でしょう。この事実に驚くだけでなく、そんなひどいことが起きているなんて……と信じたくない気持ちになるかもしれません。

 調査報告の冒頭に記されたこのフレーズは、だから、普通の親の心にも刺さるのです。

 「私達は『親は子どもを愛しているもの』という幻想にとらわれて、必要な支援を編み出してこなかったのではないでしょうか。そのために、数知れない子ども達の被害を放置してきたのではないでしょうか」

 現状、子どもの性的虐待を救済する包括的な仕組みはなく、報告書によると、被害を受けた子ども達は、誰にも相談できず、逃げるためには家出をするしかありません。生きるすべがなく、満足な教育を受けていない少女がどんな方法で生計を立てるのか。想像に難くないと思います。

 この冊子には「性暴力被害を受けた子ども達の回復支援システム」が必要と書かれています。そして前出の被害者・その弁護団が作成した要望書には「ワンストップセンターと児童相談所の連携」の必要性も指摘されています。すべての子どもが、家庭環境や両親のいかんにかかわらず、当たり前の子ども時代を送るために必要な支援をする。それこそ、社会が最優先に取り組むべき課題ではないでしょうか。私達が生きる社会は、子どもを守るという点においては、実はまだ先進国並みになっていないのです。

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被害者と被害者弁護団による政策提言の詳細 性的虐待の時効についての提言