性的虐待を受ける子ども達は親に守られず、被害の認識にも時間を要する

 やや複雑に見える「1.」の法律問題について前出の寺町東子弁護士は、こう解説します。

 「子どものころ、性的虐待を受けたケースについて、児童虐待防止法で、民法の除斥期間の特例法として、被害者が成人に達するまでは除斥期間が進行しないなどの法改正が必要だと思っています。性的虐待を受ける子ども達は、親に守られていないからこそ被害を受けるのであって、裁判所が言うような親権者による権利行使、すなわち被害者が子どものうちに親が代わりに訴えるようなことは不可能です。

 また、性的虐待を受けた子どもが、自分の受けた被害の性的な意味を認識できるようになるのは早くとも思春期以降であり、被害の意味が分からない発達段階で除斥期間が進むのはアンフェアです。性的虐待や性暴力被害を受けた人は、防御反応として、健忘や解離を生じ、フラッシュバックなどの侵入症状に悩まされています。そのために、適切な治療機関につながるまで、被害の記憶が封印されていることが多いのです。被害を被害として認識するまでに、長い期間を要するのです」

 今後、被害者と被害者弁護団は法改正や被害者救済制度の整備に向けた政策提言を行う予定で、弁護団は法改正に関するネット署名を呼びかけています。

 要望書の「2.」にある「被害者救済」を行っている機関の中には、民間のシェルターや婦人保護施設があります。DV被害を受けてシェルターで一時保護された女性と子どもの性暴力被害体験について、スタッフや施設職員を対象に行った調査をまとめた『DV家庭における性暴力被害の実態』という冊子(NPO法人全国女性シェルターネット発行)は大変参考になる資料です。第二章「子どもの性暴力被害の実態と特徴」には30ページ余りにわたり、統計データや実例が紹介されています。