「課題2」投資家が情報を取得しやすいか
次に、2つ目の課題についてお話しさせていただきます。
まず、東証一部上場企業において、女性管理職・役員の開示情報がどれくらい推移したかという数値についてお話しします。1年目のなでしこ銘柄の選定前の段階(2012年度)では女性管理職・役員の存在を開示する企業は約183社でした。しかし、2年目の選定前の段階(2013年度)では、およそ2倍の384社に増えました。
現在、女性の活躍支援に関する企業の情報開示は、経済産業省だけでなく、内閣府や厚生労働省などからも要請しています。
経済産業省は、女性管理職比率・女性役員比率の開示を企業に求め、開示要請媒体として、CSR報告書やアニュアルリポートを挙げています。
内閣府は、企業における女性の活躍状況の「見える化」サイトを通じた情報開示に取り組んでいます。
厚生労働省は、投資家向けではないですが、自社の女性活躍支援の取り組みをポジティブ・アクション情報ポータルサイト等を通じて開示するよう、企業に要請しています。
また、この3つの機関から要請されている情報開示要請項目は、共通項目ばかりではありませんので、企業の担当者の負担は軽いとは言えません。投資家、特に機関投資家は企業の四半期決算なども確認しなければならず、非常に忙しい人たちです。そのような人たちに対して女性の活躍支援に関する情報も見てくださいと言いながら、開示項目や媒体が複数にわたることは、投資家側にとって情報取得がしやすい環境とは言えないのではないでしょうか。
参考までにオーストラリアの事例を紹介します。オーストラリアでは証券取引所が主体となり、年次報告書のなかで女性の比率を開示するよう、企業に要請しています。時価総額が高い企業ほど開示比率は高く、項目による開示比率にも大きな差は見られません。
日本の場合は、少なくとも経産省、内閣府、厚労省と、少なくとも3つの情報要請元があります。企業側の負担を考慮しても、将来は要請元が統一されることが望ましいと思います。2つ目の解決策につながりますが、企業の女性活躍支援に関する情報を今後、投資家に使ってもらうためには、情報の分量も、投資家側にとって必要な情報のみを開示し、利用しやすい開示の仕方を検討する必要があると考えます。
後編では、勉強会後の質疑応答についてリポートします。
(文/西山美紀 写真/花井智子)