株主の議決権行使によりダイバーシティーを働きかける

 参考までに、米国で株主の議決権を行使して、ダイバーシティーを企業に働きかけている非政府組織「Thirty Percent Coalition」の事例を紹介します。

 「Thirty Percent Coalition」は、2015年末までに上場企業の取締役会において女性比率を30%にすることを目指し、設立された団体です。特徴は、構成メンバーのなかに“機関投資家”が入っている点です。

 機関投資家が入っていることで、この構成メンバー全体で運用している資産残高は約1.2兆円に上ります。そのため、「Thirty Percent Coalition」では、ダイバーシティーを行っていない企業に対しての議決権の行使や、ダイバーシティーに取り組むよう手紙を送るといった行動を通じて、ダイバーシティーの推進に取り組んでいます。実際、企業のなかには、役員の指名プロセスにジェンダー・ダイバーシティーを考慮するとした企業もあります。

 では、投資家が女性活躍支援に取り組む企業の株式を購入するための課題について、その解決策をお話しさせていただきます。

 

 企業が女性の活躍支援に向けて取り組むときには、大きく3つの段階があると考えられます。

 第1段階)課題を認識し、取り組みに着手
 女性の活躍支援を促すためのプロジェクトチームを作り、局所的に女性管理職を増やし始める。

 第2段階)経営トップが課題を認識し、組織内で取り組みが徐々に浸透
 中期経営計画やアニュアルリポートのなかでも、ダイバーシティーに取り組む重要性を位置づけ、組織全体で取り組みを行う。

 第3段階)女性が活躍できる企業になり、企業の価値向上に寄与する効果が出てくる
 従業員の働き方が改善されて残業が減ったり、女性の視点で開発した商品がヒットし売り上げに貢献したりするなど、企業の価値向上に寄与する効果が出てくる。

 投資家の関心は、第2段階から第3段階にかけての取り組みです。経営トップが動き出せば、企業が変わるかもしれないと感じますし、女性が活躍できる環境になれば、商品開発など企業の業績にメリットをもたらす可能性を感じるからです。

 なでしこ銘柄等で開示を要請している、女性管理職比率や方針といった項目は、第1段階の部分に該当する項目が中心となっています。しかし、実際に投資家が関心のある項目は第2段階から第3段階の部分で、女性の活躍が企業の価値向上に寄与する道筋の部分です。

 投資家の関心を引きつけていくためには、CSR報告書ではなく、アニュアルリポートといった投資家が見る媒体で、女性の活躍支援が企業価値向上に寄与する道筋を開示していくことが重要ではないでしょうか。