「課題1」投資家は、女性活躍支援をする企業の株を本当に購入するか

 ここで、投資家が企業の女性活躍支援を前進させるにあたっての、2つの課題を取り上げます。

 1つ目は、女性活躍支援に取り組む企業の株式を投資家が果たして購入するのか、2つ目は企業が女性活躍に関する情報を開示したとしても、投資家がその情報を容易に取得できるのかということです。

 まず、1つ目の課題についてお話しさせていただきます。

 なでしこ銘柄はあくまでもきっかけです。企業側はなでしこ銘柄に選ばれたいとの思いから、きちんと情報開示を行うようになります。投資家側は「女性の活躍支援に取り組む企業は長期的に成長するかもしれない」と関心を持ち、株式を購入し、それによって企業はますます女性活躍支援に取り組みます。

 そうした企業が増え、長期的には企業のなかでイノベーションが生まれたり、働き方が変わったりすることで、企業の価値が向上していく。そのようなポジティブなループを作っていくことが、最終的な目標です。

 しかし、女性活躍支援に取り組む企業の株式を投資家が購入しなければ、このポジティブなループにはつながりません。

 日本における女性活躍支援に取り組む企業への関心を調べてみると、機関投資家が企業評価や投資判断を行う際に重視しているESG情報のうち、「人材の育成・活用(若手・女性・高齢者等)」は8%にとどまっています。

 ※年金シニアプラン総合研究機構(2013)「ESG投資に関する運用会社アンケート結果」

 一方、「ガバナンス・リスク管理体制の整備」(24%)、「コンプライアンス問題の発生と改善策」(20%)など、すぐに株式の動きに影響のある情報が高くなっています。

 また、一般生活者では、「生活者が考える女性の活躍に対する企業のメリット」のうち、「株価や業績に好影響を与える」と答えているのは、わずか3%です。

 ※経済広報センター「第17回 生活者の"企業観"に関する調査報告書」(2013年度)

 つまり、機関投資家も一般生活者も、女性活躍支援についてはあまり関心がないことが分かります。

海外ではダイバーシティー推進が企業価値向上に貢献することが共通認識

 海外では、ダイバーシティーの推進が企業価値の向上に寄与するという意識が、機関投資家の間で根付いています。欧米を中心として、人種や女性に対する配慮をしていこうという歴史的背景も一つあると思いますが、金融機関やNGOが、ダイバーシティーと企業の株価、業績との関係を分析して発信しているのが特徴です。例えば、「女性役員が含まれる企業の業績は良い」「ダイバーシティーマネジメントを行っている企業は株価成長率が高い」などの研究結果を示しています。

 オーストラリア証券取引所では、ダイバーシティーと株価の分析に関する研究論文を一般の投資家が見て理解できるようにウェブ上に掲載しています。

 では、実際の運用ではどうでしょうか。

 世界の資産残高上位20の年金基金のうち、多くの年金基金がESG投資を行っています。つまり、世界では女性を含めたダイバーシティーへの配慮を運用に取り入れることが共通認識になってきているのです。