新しいことに挑戦するためには、時として、自分に無いスキルを身につける勉強が必要になります。新たな世界にチャレンジした人達は、どんな勉強をしていったのでしょうか。この連載では改めて勉強し直し、新たなキャリアへとつなげた女性達を紹介します。3番目に登場していただくのは、大学卒業後、すぐに結婚し40歳まで働いたことがなかったという女性。彼女はどうやって「40歳の新人正社員」になれたのでしょうか。
伊藤さんの歩み
●大学卒業後、結婚。
●40歳、日本女子大学リカレント教育課程を受講
●41歳、法律事務所に就職。事務スタッフとして勤務
子育てがひと段落。たっぷりある時間で「社会に役立つことをしたい」
――正社員の経験が無かったんですね。
ええ。地方の国立大学を出て、すぐに結婚したものですから。教育学部だったので、周りにも一般企業への就職活動をする人があんまりいなかったんです。私はもう結婚も決まっているし、就職活動はしなくてもいいかな、と。学生時代にアルバイトくらいはしたことありますけどね。
――ずっと専業主婦をされてきたのですか。
夫は会社員ですが、とにかく出張の多い仕事でして、長期間、家を空けることもしょっちゅうなんです。夫も私も実家が遠方なので、親を当てにできない。どうしても子育ては私が中心にやらなければなりませんから、自分が働くことは考えたこともありません。子どもは大学生の息子と高校生の娘です。
娘が中学に入って部活を始めると、朝、家を出たら19時くらいまで誰も帰ってこないという状況になりました。それで「私、すごく時間があるなぁ」と気づいたんです。習い事も色々しましたけど、限界がありますよねぇ。
暇だからアルバイトくらいしようかと思ったんですけど、いかんせん仕事の経験が無い。学生時代にしたことのある接客ならできるかな、と考えたんですが土日に働くとなると、家庭に支障が出るかもしれないでしょう。それで悩んでいたときに、日本女子大学リカレント教育課程(以下、リカレント)をテレビで知ったんです。
――リカレントのどういうところに興味を持ったのですか。
普通の習い事じゃなくて、何か社会に役立つことを習いたかった。リカレントはパソコンや英語、ビジネススキルを学んで社会に出る訓練をします、ということだったので、あ、私にぴったりかもって(笑)。
それまで6000~7000円の月謝で英会話を習っていましたから、パソコンと英会話、他にも色々習えるなら、年間24万円という学費は案外お得かもと思いまして。今考えると、何か新しい世界に行ける、どこか遊びに行くような感覚だったかもしれませんね。絶対に就職したいとまでは思っていませんでしたから、視野を広げる中で、一つの選択肢として働くというのもあるかな、というくらいの意識でした。
――ご主人はリカレントに行くと言ったとき、どういう反応でしたか。
基本的に私がやりたいことは自由にやらせてくれるので。子どもが小さいうちは家にいてくれないと、という雰囲気でしたけど、下の子が中学生にもなれば、そんなに親が必要ではなくなってくるし、まぁいいんじゃない?って感じでしたよ。
実際にリカレントに通うようになると、帰宅が遅くなる日もあって、子どもには「今日は遅くなるから、お米をといでおいて」なんてお願いすることもありました。親離れ子離れのいい期間だったかもしれませんね。