夫は私と同じような経歴を持ち、今も金融関係の仕事をしています。以前の私は夫の3倍近い収入があったのに、今は5分の1以下。思う存分働ける夫が羨ましく、正直ちょっと悔しいときもあります。

10年後のビジョンを見据えることで、気持ちが軽くなった

家の近くの公園で、散歩中のひとコマ
家の近くの公園で、散歩中のひとコマ

 先の見えない苦しさの中で、将来、自分がどんな生き方をしていたいのかじっくり考えました。大切にしたいのは、まず家族との暮らし。例えば10年後、娘は12歳になっています。放課後は塾に通っているかもしれません。学校から帰ってきた娘に「おかえり」とお弁当を手渡し、塾に送り出す…。そんな未来を思い描いたときに、フルタイムの正社員として24時間仕事に追われる道は自分の求める生き方とは違う、と自然に思えたんです。

 視点を変えることができたのは、結婚後、夫と共に留学したイギリスでの経験も大きいです。イングランドの田舎町で1年間暮らしたのですが、静かな場所で経済学の勉強をしながら、じっくり自分を見つめ直すことができました。若者も少なく、近所の人はおじいちゃん、おばあちゃんばかり。イギリス人はシャイなので、近所付き合いも活発ではないのですが、最後には仲良くなって家に招待しました。そんな交流の中で、一つの場所で「持ち場を守って生きていく」のもすてきな生き方だな、と感じるようになりました。

 1週間、1カ月…という短いスパンで見れば、出産前に比べ、仕事やネットワーキングにかけられる時間が少なくなっているのは事実です。でも今は、70~80代まで生涯現役で働き続ける時代。子どもが手を離れた後も、長い時間が残っています。10年単位の長いスケールで自分のキャリアを考えたら、ふと気持ちが軽くなったんですね。

 いずれは金融業界に戻り、時間と仕事量を自分でマネジメントしながら、フリーランスとして専門性を生かした仕事をしたい。そんな10年後のビジョンに向かって、今は培ったスキルを生かす道を模索している段階です。