統計データを使って、子育てや教育にまつわる「DUALな疑問」に答える本連載。今回は、親にとってはつらいですが、目を背けるわけにはいかない「子どもの自殺」について取り上げます。
 ここ100年の統計データを読み解くと、日本の子どもの自殺率は急減しましたが、90年代以降はまた上昇傾向にあります。また小・中学生の自殺原因は「学業不振」や「親子関係の不和」「入試の悩み」によるところが大きいのです。

 こんにちは。武蔵野大学講師の舞田敏彦です。今年の9月初旬、東京の大田区にて、小学校6年生の女子児童2人が飛び降り自殺するという事件がありました。動機は受験勉強に疲れたとのこと。

 自殺とは、自らの意志によって自己の生命を断つ行為をいいます。子どもといえど、10歳くらいになればどういう行いをしたら死に至るかを予測できますので、十分成立する概念です。今回は、子どもの自殺統計をご覧いただきます。それを通して、現代っ子の「生きづらさ」の問題について考えていただければと思います。

子どもの自殺率は「2万2000人に1人」

 厚生労働省が毎年刊行する『人口動態統計』には、年間の自殺者数が年齢別に掲載されています。最新の資料を見ると、2013年中の10代の自殺者は546人です。同年10月時点の10代人口は約1184万人。よって、10万人当たりの自殺者は4.6人となります。これが昨年の子どもの自殺率です。2万2000人に1人というオーダーですので、出現確率としてはきわめて低いですが、子どもの「生きづらさ」指標と読むことができます。

 この値は、過去からどう変わってきているのでしょう。前年比や5年間というスパンではなく、もっと歴史的な視野で見てみます。私は、20世紀以降の子どもの自殺率カーブを描いてみました。1900(明治33)年から2013(平成25)年に至る、100年以上の長期推移です。

 総じて、子どもの自殺率は昔のほうが高くなっています。意外に思われた方もいるでしょう。戦前期では、ほぼすべての時期で自殺率10.0のラインを超えています。親や奉公先の主人にこっぴどく叱られた、酷使された、ひもじい……。当時の新聞を見ると、こんな動機での自殺が報じられています。