男子、女子の自殺原因には違いがある

 性別の違いも見ておきましょう。小・中・高校生で見ると、最近3年間の自殺原因の延べ数は、男子は551、女子は339です。各原因が全数に占める割合を出し、グラフにしてみました。横軸に男子、縦軸に女子の数値を取った座標上に、それぞれを位置付けた図です。

 斜線は均等線であり、これよりも下にあるのは「男子>女子」、上にあるのはその逆を意味します。どうやら男子型と女子型の原因があるようで、男子では学業や進路など「将来展望」に関わるものが多く、女子では家族関係や友人関係など「対人関係」に関連する原因が目立っています。なるほど、肌感覚に照らしてもうなずけるデータです。

 子どもの自殺率は最近上昇の傾向にあること、自殺原因(動機)として何が多いかをデータでみてきました。個々の動機は実に様々ですが、それらの下にある共通の地盤、すなわち今の子どもの「生きづらさ」をもたらす現代的状況とはどういうものでしょう。一言でいうなら、「逃げ場がない」ことだと思います。

 私が前に教えた学生さんで、高等学校卒業程度認定試験(昔でいう大検)を経由して入ってきた子がいました。高校で手ひどいいじめを受け、1年の冬で中退。その後は、予備校のネット授業で独学し、上記の試験に合格したのだそうです。幸い、親がこういう道を快く許してくれたからよかったが、そうでなかったら「本当に死んでいたかもしれない」と語っています。