本作では、年1回スタッフ・キャストが集まり、3~4日間撮影をするというスケジュールを、12年間繰り返したそうです。メイソン役のエラー・コルトレーンは、幼かった撮影当初はセリフも丸覚えで、リチャード・リンクレイター監督(『恋人までの距離(ディスタンス)』『ビフォア・サンセット』『ビフォア・ミッドナイト』のビフォア・シリーズで知られる)から手取り足取り演技の指示を受けていたそうですが、成長するにしたがって、撮影前に監督と話し合い、コルトレーン自身の現状を語り、彼の人生をメイソンというキャラクターに反映していったそうです。

撮影現場でのコルトレーンとリンクレイター監督
撮影現場でのコルトレーンとリンクレイター監督

 母オリヴィア役のパトリシア・アークエットも、父メイソン・シニア役のイーサン・ホークも人気俳優なので、この12年、私は様々な作品で彼らの演技を見てきました。まさか、その間に本作の撮影をしていたとは全く知らず。離婚しつつも、それぞれのやり方で子ども達を愛し、導いていきながら、親として彼ら自身も成長していく元夫婦を演じた2人の自然な年の取り方も、本物のホームビデオを見ている気持ちにさせてくれます。

 メイソンがどんどん成長し、巣立ちが近づくにつれ、自分も将来オリヴィアのような気持ちになるのだろうかと、胸が締め付けられる思いでした。本作は、もっともっと見ていたい、終わってほしくないと思うような、とても貴重ですてきな映画です。