男性の抱える問題を研究する「男性学」が専門の武蔵大学社会学部助教の田中俊之さんに、編集部の荒井(共働き夫、以下黒色)とライターの辛(ワーママ、以下オレンジ色)とが、「今どきの共働き夫のつらさ」について色々聞いてきました。

 前編記事「妻よ、家事能力の低い夫を叱らないで」に引き続き、今回は「イクメン問題」や「人生のなかで立ち止まる時間を作る方法」がテーマです。

「長時間労働でイクメン」って、おかしいのでは?

武蔵大学社会学部助教の田中俊之さん。つい最近結婚したばかりの共働き夫だ
武蔵大学社会学部助教の田中俊之さん。つい最近結婚したばかりの共働き夫だ

―― 田中さんは、育児に積極的に関わる男性、いわゆる「イクメン」と言われる言葉や新しい男性像が広まっていることについてどうお考えですか?

田中俊之さん(以下、田中) ある事柄を世の中に普及させていくときには、どうしても新しいキーワードが必要になりますよね。キーワードがなければ、男性の育児問題について関心を集めることはできないですからね。そういう意味では「イクメン」という言葉が広まるのは悪くないと思います。

 ですが、私が気になるのは、イクメンという存在が「会社でフルタイムで働き、さらに育児にも協力的な男性」という前提になってきていることです。

 ただでさえ日本の男性は、週50時間以上働いている人の割合が38%を超えています。これは先進国では突出した数字です。男性にも育児に目を向けてもらおうとする動きは歓迎しますが、「長時間労働の見直しが行われずに、男に育児も家事もしてください」というのは無理があります。

 まず男性の働き方の見直しが先にあって、そのうえで「イクメン」という言葉が広まればいいんですが……。

―― あと子育てをしっかりしている男性でも、「イクメン」と呼ばれることに違和感を持つ人は多いんじゃないかな、と個人的に思っています。

―― それは、一くくりにされるのがイヤだとか? 私も「ワーママ」と呼ばれるのが実はイヤでしたよ。「ママさんバレー」や「ママさんアスリート」、「ママさん編集者」という言葉にも違和感が……。「プライベートでやっていることと肩書きとは関係ないのに」という思いがあります。

田中 実際、女性が育児をすること自体には名前は無いですよね。「自分達が普通にやっていることに、あえて名前を付けられると変な感じがする」という面があるのではないでしょうか。