IT企業のサイボウズの共同設立者である青野慶久社長は、病児の世話も家事もするリアルイクメンらしいことが第1回「サイボウズのイクメン社長は本物か?」から分かりました。とはいえ、元来は24時間仕事をしていたいタイプ。それができない今、葛藤も抱えているとのこと。好きな仕事を24時間できるようにするためには、どうしたらいいのか? インタビュー2回目は、企業にとって多様であることの重要性と、青野社長が育児に見いだしているメリットについて聞きました。

僕には『太陽にほえろ!』的仕事観が刷り込まれている

サイボウズ・青野慶久社長
サイボウズ・青野慶久社長

羽生祥子日経DUAL編集長 前回、意識がもうろうとしながらも働く自分を格好いいと思う男性の心理についてお話を伺いました。個人的にはむしろ見た目が悪いと思うのですが、誰か、モデルがいるんでしょうか。

青野慶久社長 『太陽にほえろ!』ですね。『太陽にほえろ!』っていうテレビの刑事ドラマがあったじゃないですか(1972~86年まで放映)。あれって何カ月かに1回、必ず誰かが殉職するんですよ。あの死ぬシーンが、イメージに近い。俺、ギリギリになっても逃げないぜ、仕事から。……格好いい!

―― (苦笑)

青野 笑ってください。滑稽ですよ。滑稽なんだけど、僕はそれを刷り込まれているんです。多分、僕より上の世代の人とか、もっと刷り込まれている。

 今、『太陽にほえろ!』を放映しても、多分あんまりウケないと思うんですよ。だって職場で死ぬなんて……。ただ、70年代当時、あのドラマが高視聴率だったということは、やっぱりみんな共感していたということですよね。

メールの返事を減らして「ちょっといい印象」を手放す勇気

―― 私も独身のときは、会社に意気込んで泊まり込んだりしていました。でも自分が30歳で子どもを産むことになって、同じやり方では絶対に続かないと分かった。そこで色々なことにトライしたんです。

 まず、聞くと馬鹿馬鹿しいかもしれませんが、「は」を「が」にするとか、「へ」を「に」にするといった自分の中で堂々巡りになる推敲はしない。生産性の問題ですね。最後に数時間かけてこれをやらなくても、部長からも読者からも、評価はほぼ変わらなかったんですよ。結局、自己満足でやっていたんだと分かりました。

 さらに、優先順位を付ける作業自体に時間をかけることをやめました。来た仕事からブルドーザーのように取り掛かって片付けていくことにした。当時は下っ端の記者だったんで、私の優先順位なんてチームにまったく影響はない。そんなことより早く仕事を片付けろよと。それから、メールの返信も簡略化した。「いつも大変お世話になっております→先方を立てる挨拶→ウケる小話→本題…」みたいな世界は、24時間働けていた独身時代の遺物ですね。ともかく、子どもを育てながら働き続ける方法を色々ともがいて模索したんです。

 そういう“もがく”ことって、男性だとやっぱりなかなかできないのかもしれませんね。気持ち的にも、機会的にも、女性より「仕事第一優先」というのが判で押されてしまっている。

青野 わかります。日々残業している人は、夜の10時過ぎて「は」を「へ」に変えるように頑張っているわけですよ。そこに生産性という考え方は無いんです。

 日本の生産性が低いのは、どうしたらいいでしょう? とよく尋ねられます。まずは、本当にやるべき仕事と、やらなくていい仕事を選別すること。これを1回やるといいと思いますね。

 僕は、子どもが生まれたことで強制的にその選別をせざるを得ない環境になって、今は自分の中では、これはやる、これはやらないという線引きがあります。メールもかなりの数、返さないですもん。だから僕、相当感じが悪いと思うんです。でも、返すのにかけた時間に対して得られる「ちょっといい印象」が割に合ってないと思うんです。僕自身を信頼してもらっていたら、ここで1本メールを返さなくたって多分信頼され続けるんですよね。

次ページから読める内容

  • 男性諸君の人生がみんな同じに見えてしまった
  • 人間はそもそも多様になるよう設計されている
  • 自分の望む働き方も含めた「報酬」を考える
  • 世代交代が進めば自然と多様化は進む?
  • 大黒柱でなくなったときの恐怖が仕事へと駆り立てる
  • 男性だけが変わればいいわけでは実はない
  • 母親の世代にとっては、家事と育児は女性の仕事
  • 稼ぎが多ければ家事分担は少なくていいのか?
  • 会社でハードワークした後、家でハードワーク
  • 仕事人間ならではの発想で育児もすべて仕事のため

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