ミシェル夫人の子育てに関心が集まるのは、キャリアとの両立を実現しているからでもある。1964年にシカゴ郊外で、決して裕福と言えない地域で生まれ育ったミシェル夫人。成績はずばぬけて良く、名門プリンストン大学、ハーバード大学ロースクールに進学。卒業後、弁護士として法律事務所で働いていたときに、研修生だったバラク・オバマ氏に出会う。

 2人は3年後に結婚。ミシェル夫人はシカゴ市長の補佐として都市開発に携わったり、公的機関勤務志望の若者を支援するNPOのシカゴ支局事務局長や、シカゴ大学の学生サービス部副部長を務めたりするなど、地域貢献の分野でリーダーシップを発揮した。新婚当時、新米議員としてスタートした夫よりも、ミシェル夫人は一足先にキャリアを築いていたといえるかもしれない。

ワーママならではの視点で社会問題に取り組む

 大統領選のキャンペーンでも、ミシェル夫人のキレのあるスピーチが夫の好感度を押し上げた。黒人や女性という「マイノリティー」の視点でアメリカ社会の多様性に感謝しつつ、子を持つ母として、社会の改善すべき点を提案する。子育てと仕事、どちらにもエネルギーを注ぎ込んできた言葉は説得力を持つ。

 オバマ大統領の就任後は、社会問題となっている子ども達の肥満防止に向けて、運動と栄養の啓蒙キャンペーン「レッツ・ムーブ」に注力してきた。アメリカでは今、野菜と果物を食べる習慣のない子ども達が多いことが問題視されている。

 そこで生鮮食品のスーパーを貧困地域に誘致したり、公園など子どもの遊び場を増やして運動やスポーツができるようにしたり、アメリカ各地を駆け回って活動する。母として、コミュニティー活動に関わってきたキャリア女性として、これまでの経験を遺憾なく発揮できるプロジェクトだ。