保育園に関わる規制を、働く母たちのために見直したい

 保育には様々な規制がある。例えば保育園を新たに開く場合、屋外に避難用の階段を必ず設置しなければいけない。大手生命保険会社や大手自動車メーカーが自社保有ビルの一部を保育園に提供しようと考えたが、外階段がないという理由で認可が降りなかった。翁さんは厚生労働省の担当者と議論を重ね、外階段に代わる避難経路が確保できれば、開園できるよう規制を見直した。

 
 東京都など自治体が独自基準で開設を認める認可外保育園にも、認可保育園と同様の公的な支援をするべきという主張も、ようやく実現に向けて動き出した。
 一方、不足している保育士を増やすため、試験を年2回に増やすという要望は通らなかった。厚労省の言い分は「保育士が足りないのはここから3、4年の間。5年後には保育士は余ってくるし、試験を年2回にすればコストがかかる」。

 
 それならせめて、「認可保育園で幼稚園教諭が働けるようにしてほしい」と要望しても、「保育の質が低下する」(厚労省)という理由で認められない。株式会社による保育園経営への参入も、自治体が保育の質の低下を懸念して、実現したのはごくわすかだ。
 翁さんは「働く母親たちは、今現実に困っている。5年後に保育士が余ったら、そのときにまた見直せばいい。多少施設が狭くても、保育士の代わりに幼稚園教諭がいても構わない。良質な保育が受けられるのなら、株式会社でも問題ないはず」と主張する。


 翁さんは息子を保育園に預けたことで、幼稚園よりも自立心が身についたと考えている。高校生になった息子と最近、こんな会話をした。「保育園どうだった?」「うん、楽しかったよ」。満足していたのは自分だけではなかったと知り、少しほっとした。