共感的表現には、親の心を鎮める効果も

 ここで共感的表現を使ってみましょう。

 例えば、「ママの携帯を触らないで」と言いたいときも、「携帯、触りたかったんだよね。それは分かるよ。新しいから触ってみたかったんでしょ」と理解を示してあげる。すると子どもも「そうなんだよ」と安心して話を聞く態勢を整えてくれます。

 親も共感的表現を使うことで、子どもの気持ちに理解を示すことができ、親が一方的に叱るという形を避けることができます。

 親が「携帯さあ、新しいから触ってみたかったんだよね」と言うことで、親も自分の言葉に引っ張られて、「確かにこれは触りたいと思うだろうなあ」とか、「自分も昔、似たようなことで叱られたよなあ」と考えるでしょう。 それが、子どもに対してフラットな立ち位置から注意できるようになる、というメリットにもつながります。

子どもの「気持ち」と「行動」を切り離し、「行動」だけを指摘

 そして、共感的表現には、もう一つ大事な効果があります。それは、親が子どもの「気持ち」と「行動」を切り離して扱えるようになることです。

 例えば、
 「携帯さあ、新しいから触りたかったんだよね。それは分かるよ」
   (と、子どもの気持ちを一旦受容する)
 「でもね、」
   (気持ちを切り替える)
 「勝手に触るのはよくないよ。携帯を元の場所に置いてね」
   (行動を指摘し、肯定的な表現で指示を与える)
という感じです。

 問題行動を起こしたとしても、まず共感的表現で子どもの気持ちに理解を示すことが大切です。「バカじゃないの」とか「なんでこんなことも分からないの」と頭ごなしに叱っては逆効果です。

 そして、「でもね」で話を切り替えます(この「でもね」も地味に重要です)。

 最後に、行動について指摘します。「○○するのはよくないよね。△△しよう」と。

 これで、子どもの人格を否定せず、行動だけを指摘することができます。