企業が学校に出向いて授業を行う“出張授業”が増えている。インターネットで“出張授業”“出前授業”を検索すると、多数の企業の情報が並ぶ。過去には、民間企業と教育現場の接点はあまりなかったが、企業の社会的責任(Corporate Social Responsibility)意識の広がりから、多彩な授業内容が用意されるようになり、総合的な学習の時間や各教科の一環として積極的に活用する学校も増えてきたのだ。環境について学ぶ三井不動産レジデンシャルの「&EARTH教室」も、そうした出張授業のひとつ。どんな授業か、子どもの様子を授業参観させてもらった。

 多摩川にほど近い、静かな住宅街に位置する川崎市立下河原小学校。5年生の総合的な学習の時間では、これまで“食育”について学んできたが、今日から新しく“環境”について学ぶという。その第1回が、この「&EARTH教室」だ。

 授業は、いつもの教室ではなく図書室で行われた。3~5人の班ごとに1つのテーブルを囲んで座り、大型テレビを見ながら学習していく。画面には、環境に関わるテーマと、簡単なストーリーが映し出され、解説を聞いたあとゲームやクイズに挑戦する。子どもたちは班で話し合って回答しながら、ポイントをためていくという流れだ。

進行を担当するのは、三井不動産レジデンシャルと共に「&EARTH教室」を運営するNPO法人ビーグッドカフェの鶴淵雄大氏。子どもた ちの様子を見ながら、テンポよく授業を進めていく
進行を担当するのは、三井不動産レジデンシャルと共に「&EARTH教室」を運営するNPO法人ビーグッドカフェの鶴淵雄大氏。子どもた ちの様子を見ながら、テンポよく授業を進めていく

 最初のテーマは“あいさつ”。良い環境を維持するにはコミュニティが大切ということで、コミュニティを形成するきっかけとなる、身近なあいさつを取り上げている。「班も1つのコミュニティ。1人でできないこともみんなで協力すればできる」という説明に子どもたちも納得。ここで世界の国々の「こんにちは」がどこの国の言葉かを当てるゲームが始まった。正解すると「やったー!」と喜んだり拍手したり。いつもとちがう授業で多少緊張していた感じの子どもたちも、すっかり笑顔になった。

イタリアの「ボンジョルノ」や、インドの「ナマステ」は分かっても、タイやフィンランドの言葉となると大人でも迷ってしまいそう。これだと思う国のカードを、元気よく掲げる子どもたち
イタリアの「ボンジョルノ」や、インドの「ナマステ」は分かっても、タイやフィンランドの言葉となると大人でも迷ってしまいそう。これだと思う国のカードを、元気よく掲げる子どもたち

 次のテーマは“森林”だ。植物や動物の勉強をしているという大学生の環境ボランティアスタッフが前に出て、木材自給率や間伐材について解説。その後、森の成長の順番を考える並べ替えゲームが行われた。都市部では森という自然に触れる機会が少ない。最初、間伐について知っていると答えた子はいなかったが、分かりやすい解説を聞いたことで正しく理解し、全部の班が正解することができた。

 また、授業の終わりには、間伐材で作られた天然木のボールペンがお土産として配られる。このボールペンを手にすることで「&EARTH教室」の授業を思い出し、間伐材の利用が身近なこととして感じられる構成になっている。

森の成長の順番を考える並べ替えゲーム。緑色のTシャツを着た大学生の環境ボランティアスタッフが各班について助けてくれる
森の成長の順番を考える並べ替えゲーム。緑色のTシャツを着た大学生の環境ボランティアスタッフが各班について助けてくれる

記念の、三井不動産グループが所有する北海道の森林の間伐材で作られたボールペン。天然木なので、同じものはほかにない
記念の、三井不動産グループが所有する北海道の森林の間伐材で作られたボールペン。天然木なので、同じものはほかにない