保育園入園前のお裁縫に四苦八苦

──加納さんには高校生のお子様がいらっしゃるそうですが、加納家の子育てについて教えてください。仕事と子育ての両立は?

 作家には育休制度はありませんが(笑)、取りあえず子どもが生まれて1年間は私の仕事はお休みにしました。仕事を入れないようにする割り振りが、自由業はできますから。

──保育園には?

 入れました。ただうちの子は11月生まれなので、時期が半端過ぎて保育園には入れず、保育室に高いお金を払って預けて、1歳半になったころにようやく入れたという感じでした。

──では、保育園に入るときには1年間の「育休」は終えていたんですね。

 はい。保育園に入るときと、原稿執筆で大変なときが重なったんですよ。

 保育園に入るときにお約束のお裁縫の山がありますよね。色々な物を作ったり名前を入れたり。あれが大変で「もう、保育園に入れるために、仕事に影響が出るようなこんな作業を、なんでしなきゃいけないの」というのが、大きな戸惑いでした。

 私はお裁縫が好きでも得意でもないですから、「あ、また糸が切れた」みたいに、いらいらしながら必死に作っていました。当然、出来上がったものもすごく不細工で、「これを保育園で皆にずっと見られるのか」と思うと憂鬱でしたね。

――小説『七人の敵がいる』でも、保育園の「作り物」に悩んだというヒロインのエピソードがありましたね。

 働く親としては、金銭的な負担は当然したうえで、プロの方に代行していただければありがたいよなあと思います。でも、やっぱり子育ての現場って、「お母さんの手作りが愛情」という考え方が主流なんですよ。だから、やらざるを得ないところに追い詰められている方は、今も多いんじゃないでしょうか。