もちろん何か人様にご迷惑を掛けたりとか、自分でけがをしちゃったりとか、明らかに間違ったことをしたりしたときに、きちんと叱るのはすごく大事だと思います。

 でもそうじゃなくて、例えば勉強ができなかろうが、色々なことができなかろうが、それも丸ごと受け入れる。そこで「なんで、あんたはこうなの」という否定の仕方は絶対しないように心掛けています。

 「注意」と「否定」は違うんです。

 子ども自体を否定するような叱り方をする人ってよく見かけるんですよ。「お友達はできるのにあなたはできないのね」とか「弟に負けて恥ずかしくないの」とか。そういう叱り方をしている親御さんを見ると、私も子どもの気持ちになっちゃって、胸が痛くなります。

奥さんの気持ちに寄り添える旦那さんでいてほしい

──では最後に子育て中のDUAL世帯に先輩としてアドバイスを。

 アドバイスなんておこがましいです。とにかく働きながら子育てしている人は偉くて、頭が下がります。私も会社員生活が長かったのですが、もう戻れませんから(笑)。

 担当の編集者の方も今、子どものいるお母さんが多いんですけど、それでなくても激務なのに、そのうえ、ちゃんとお母さんをやって、PTAや保護者会など、何でもこなしていらっしゃる。

 だから本当に体だけは気を付けてください。お母さんが倒れちゃったら大変だから。それだけですね、言いたいことは。

──では、小説や映画と違い、幸運なことにまだ生きているご主人にも。

 旦那さんには、やっぱり奥さんの気持ちに寄り添ってほしい。

 男性って女性の愚痴を聞くと「じゃあ、こうしたら」と対策を出すじゃないですか。でも「そうだね、大変だね」と言ってもらうだけで解消できるストレスもあるんです。

 例えばPTAのもめ事で「もうひどい人がいるのよ」という話をしたりすると、男性ってすごく嫌がるでしょう。「そんな、おばちゃん同士のもめ事を、疲れて帰って来たときに持ってくるなよ」って。

 でも、そういうのは聞くだけでいいんです。

 聞いてあげて「そうだね、ありがとうね、君がやってくれるから助かるよ」とまで言ってくれたら、それだけで報われたと思うんです。とってもうまくいくと思いますよ。頑張ってくださいね。

(取材・文/日経DUAL編集部 大谷真幸 写真/大橋宏明)

記事に登場した加納朋子さんの本

『ささら さや』(幻冬舎文庫)
幸せの絶頂で、突然夫を交通事故で亡くしたサヤ。まだ首も据わらない赤ちゃんのユウ坊を抱えてぼうぜんとしたまま、大好きな伯母が残してくれた佐々良という田舎町の家に引っ越してきた。小さな町なのに、なぜかサヤの周りでは、少し不思議な事件が次々起こる。お人よしで、おっとりしたサヤが心配でたまらない夫は、他の人の体を借りて、助けに来るのだが……。ほんわかと温かい連作ミステリー集。

『七人の敵がいる』(集英社文庫)
山田陽子は、編集者としてバリバリと仕事をこなす女性。曲がったことやずるいことは大嫌い、これまでひたすら真っすぐな道を駆け抜けてきた。そんな彼女の一人息子である陽介が小学校に入学。その途端、PTAに学童保育、自治会、夫の家族……陽子の前に次々と今までとは違う「敵」が立ち塞がる。子どもがいると、今までの自分流「真っすぐ」だけでは突き抜けられない。いったい、どうすればいいの?! ワーキングマザーの奮闘ぶりに、笑って、泣いて、うなずける、痛快子育て小説。

この記事の関連URL
映画『トワイライト ささらさや』公式ホームページ http://www.twilight-sasara.jp
小説『ささら さや』出版社ホームページhttp://www.gentosha.co.jp/book/b3189.html
小説『七人の敵がいる』出版社ホームページhttp://www.shueisha.co.jp/7ni-n/