子どもが加わって、家族にまた違う価値観が生まれる

 出会わなかった人に出会うといえば、結婚もそうですね。

 結婚して相手の親族と付き合うのは、やはり違う環境で育った人達だから価値観から違って当たり前だし。夫婦だってそうです。味付けひとつ取ってもそう。一生懸命作ってもまずいと言われると女性側は傷付きますよね。

──ご主人は「まずい」っていうんですか?

 結構はっきり言うタイプですね。だから結婚して、しばらくは色々な常識とか価値観の擦り合わせが本当に大変でした。これはどこのカップルもそうだと思うんですけど、最初のころほど細かいことでけんかしますよね。だんだん少しずつお互いに妥協するなり、納得するなりして、その家庭に新しい価値観が生まれる。

 そこに子どもが加わることで、また違う価値観が生まれていく。

 カレーのルウをひとつ取っても、私達は辛口が好きだったんだけど、子どもがいるとそうもいかないから最初は甘口にして、でも成長とともに中辛までいけるかなと試してみたり。そういう変化が楽しいんですよ。

親が子どもを丸ごと受け入れなくてどうする

──加納さんが子育てをしていて気を付けていること、心掛けていることは?

 子どもを否定しないこと。これは強く思っています。

 子どもを丸ごと受け入れて肯定する。夏目漱石の『坊っちゃん』に清って出てきますよね。坊っちゃんがどれだけむちゃくちゃなことをしても、清は丸ごとそのまま受け入れる。

 何があってもどんなときでも、この人だけは自分を受け入れてくれる。そんな人間が一人でもいたら、人は生きていけると思うんですよ、どんなつらいことがあっても。だから、親がその存在にならなくてどうする、みたいな感じです。