子どもは未来。親の思いをつなげてくれる
──子どもができると親の思いが次の世代につながっていくということですね。
そうなんです。子どもって未来なんですよ。
この作品で言えば、子どものユウスケが「未来」を、母親であるサヤが「現在」、そして主人公のサヤを支える3人のおばあさん達が「過去」から連続したものを象徴しているんです。
――作品の中では、お人よしでちょっとのんびり屋さんのサヤが一人で赤ん坊を抱えてオロオロしているのを、アクが強くてお節介なおばあさん達が「老婆の知恵」で色々助けてくれますね。
DUAL世代は、映画や小説に出てくるおばあちゃん達をきっとウザイと感じると思うんですよ。 確かに「何十年も前の子育てなんて古いよ」となりがちじゃないですか。でも、古い知恵の中にも、耳を傾けるべき部分は必ずあると思うんですよね。
サヤはとても薄幸の境遇で、既に親も亡くなっています。だから知恵を授けてくれる人が誰もいない状態だった。手探りでやっているところに、近所に住むおばあちゃん達が手を差し伸べてくれている。これはとても幸せな出会いなんです。
育児も人とのつながりから
――作品では公園で孤立してしまうサヤの姿も描かれていますが……
人とのつながりはすごく大事なんですよね。
共働きのDUAL世代は、密室で育児をするケースも多いと思います。そうすると、お母さんが孤立化しがちです。わが家は夫婦で子育てをやっていたので、特に孤立することはなかったのですが、でも、うちは夫も私も自宅にいる時間が多いレアケースですから。二人掛かりでやっていれば大変なことにならないかもしれないけれど、そうもいかないのが現実ですからね。
だからこそ、自分の心ももう少し開いて、あんまりかたくなにならないで、人の話を聞く、外の人に頼るというのは大事だと思います。
――サヤは、おばあさん達の助けを「まるでお母さんが3人いるみたい」と、とても素直に受け止めていますね。
ベテラン側もあんまり押し付けないほうがいいんですけどね。ぶつかるもとになっちゃうので。子育てのやり方ってくるくる変わっていくじゃないですか。昔はよしとされていたことが、今はとんでもないとなっていたり。だからそのあたりがちょっと難しいですよね。