シュタイナー教育では、物事のプロセスを知ることにも重点を置く。田植え、草取り、稲刈り…のプロセスを経てお米が食卓に上ることを知れば、そのありがたみがさらに分かる。

 「本当は日々の生活に農作業を取り入れたいのですが、ここは都心で、残念ながら土地的にも難しい。その分、他の県へ行って農作業をする田んぼの会に、2カ月に1回程度有志が参加しています」

 前述の1週間のスケジュールのように、おやつも曜日で決まっている。玄米せんべい、はと麦だんご、きび粥など、どれも自分達で作るところから始める、手作りおやつ。

 「例えば、玄米せんべいは、玄米をたたいて潰し、平らにして焼くところまで自分達でやります。おやつはポンと与えられるものではなく、準備や手仕事が必要ということを子ども達は学んでいきます。何かを手に入れたいときには、準備すること、待つことが必要なことも知っています。最初はうまく形が作れなくても、だんだんと慣れてくると上手にできるようになるんですよ」

 クッキーも、朝子ども達が交代で粉をひくところから始まり、おやつの時間に向けて少しずつ準備していくそうだ。

テレビを見ない生活に慣れる、家庭のあり方

 子どもと関わりのある大人の言動、しぐさをも重要視するシュタイナー教育では、ただ園に通わせ、すべてを任せればいいというわけにはいかない。この連載で取り上げてきた個性ある園へ子どもを通わせる保護者は、園の方針に賛同している人が大半だったが、シュタイナー教育はさらに行動として、保護者が日ごろから心がけるべきことがある。

子ども達の帽子は、保護者の手作り。「同じ型を渡しても、何だか一つひとつ違うのがまたいいんですよね」
子ども達の帽子は、保護者の手作り。「同じ型を渡しても、何だか一つひとつ違うのがまたいいんですよね」

 人工的なものは乳幼児期にはなるべく子どもに触れさせないシュタイナー教育では、テレビを見たりCDをかけたりすることはしない。聞こえてくる人の声、家事をする音、窓の外の鳥の鳴き声、雨の音など自然の音が耳に入る環境を大事にする。そのため、大人にも子どもが起きている時間はテレビを見ない生活に慣れることを勧める。

 また、食べ物も自然素材をなるべく取り入れるため、チョコレートやポテトチップといったものはなるべく避け、野菜を中心とした食生活にしてほしいと伝えている。

 3~5歳のクラスでは玄米と野菜中心の給食が週1回出るが、それ以外はお弁当持参。根菜などを中心とした野菜のおかずを持ってくる子どもが多いそうだ。

 「大変だと思われるかもしれませんが、保護者はこの園に通わせたから生活を変えたという方よりも、もともとテレビや人工的なものを小さいうちはなるべく排除し、大人になるための土台を作る時期にしたいと考える方が多いです。『私達がやりたいと思っていたことを実践しているところが見つかってうれしい』とおっしゃる方もいらっしゃいます。将来、子どもが自分の中にしっかり芯を持ち、自らの意思で人生を歩んでいくための基礎をつくってあげたいですね」