役割を決めるより「二人で一人」=「ニコイチ」

 育児については、母乳問題を解決できるなら、できるだけ産後から夫による「フルタイム育児」にチャレンジしてほしいと思う。「子どもを任せるなんて心配」とパートナーに思われてしまう夫、「自分の子を一日面倒見るなんて無理」と思ってしまう親でいいのだろうか?

私がパソコンを開いて仕事をする食卓で、沐浴後の着替えをさせていた夫。二人目にもなると、慣れたものだった。息子も家事育児を自然とできる男性に育ってほしい
私がパソコンを開いて仕事をする食卓で、沐浴後の着替えをさせていた夫。二人目にもなると、慣れたものだった。息子も家事育児を自然とできる男性に育ってほしい

 「夫婦どちらもフルタイム育児ができる」ことはリスク管理として必須だ。東日本大震災の時、特に強く感じた。妊娠、出産を経て女性は「親モード」に入りやすい。しかし、男性は小さな生き物を目の前にオロオロする。我が夫もそうだった。

 産後3週間目、怖いこわいと不安がる彼に思い切って赤ん坊を預けて外出した。当時は自営業、私が止まれば収入は激減する。やむなくとった処置だが、帰宅すると夫は「親の顔」になっていた。自分が気を抜けば、死んでしまう生き物。守らなければと自覚し、やればできると自信をつけたようだった。丸1日が難しければ数時間からでも、トライしてほしい。責任を分担できれば、産後鬱の防止にもつながる。

 同じく「稼ぐ力」についても、分割をおすすめしたい。

 3年前、実家の米屋がつぶれて収入がゼロになった。彼を、専業主夫として養うことはできる。ただ、私1人に頼った家計はリスクが高い。キャリアの無い彼が、もし私が倒れた時に家計を担えるように、私が投資して介護の資格をとってもらった。義母の介護問題も抱える中、現場経験を積んだ夫の存在は大きい。いざとなったら、役割を交換したり分け合ったりできる方が、危機に強いチームになる。これは、仕事でも同じだ。

 柔軟なチームを作るために、もう一度繰り返しておきたい。男性の大黒柱プレッシャーと、女性の良妻賢母プレッシャーをリセットしよう。男も女も、「家事力」と「稼ぎ力」を身につけよう。

 船の中でケンカもする。嵐に襲われ、仕方なく力を合わせる。気がつくと穏やかな波に揺られている。「ええ日やねぇ」と言い合える相手と、二人で一人、「ニコイチ」でやっていこう。

 子ども達を、新しい船に乗せて送り出す日まで。